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10月12日付、読売新聞の編集手帳。
大量殺戮(さつりく)のことをジェノサイドという。詩人の石原吉郎さんは「望郷と海」(ちくま学芸文庫)のなかで、「ジェノサイドのおそろしさは…」と書いている◆ひとりひとりの死がないことだ、と石原さんは言う。「死においてただ数であるとき、それは絶望そのものである」と。大規模な自然災害の報に接するたび、その一節が頭をよぎる◆死者何千人とくくられ、何万人とくくられる。インド洋津波。米国のハリケーン。今度はパキスタンの地震。「数」で語られる“絶望そのもの”の何と多いことか◆「家族と親類35人のうち20人が死んだ。夫は大けがをしたまま道で寝ている。なぜ、誰も助けにきてくれないのか」。パキスタン北部の町ムザファラバードで、ナズィラン・ビビさん(45)が泣き崩れたと、現地から本紙の記者が伝えてきた◆死者が2万人を超えた被災地では、何百万分の一の嘆きに過ぎないだろう。そうであろうとも、非情な「数」の中から一つでも二つでも個々の悲しみを見つめ、伝え、ジェノサイドを繰り返す天地に抗(あらが)いつづけるしかない◆首都の倒壊したアパートで、国際協力機構(JICA)の楢原覚さん(36)も犠牲になっている。一緒に亡くなった長男の輝(ひかる)ちゃんは、まだあどけない2歳である。荒ぶる自然よ。人の命をこれ以上、「数」で語らせるな。 (2005年10月12日1時42分 読売新聞) http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20051011ig15.htm この自然を荒ぶらせているのも、人間なのではないでしょうか。 作家村上龍さんは本で「"地球に優しい"とは"人間にとって都合が良い"ということ」と言っていました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 19, 2012 08:14:34 AM
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