「ゴッホの薔薇-1」@「国立西洋美術館・松方コレクション」
日本の美術館が所蔵するゴッホの絵で1番有名なのは1987年に53憶円で落札し現在はSOMPO美術館に展示されている「ひまわり」だと思いますが、原田マハ著「たゆたえども沈まず」の最初の章「1962年7月29日(ゴッホの命日) オーヴェール・シュル・オワーズ」の中にゴッホの甥の「フィンセント」と出会ったゴッホ研究家の「シキバ」がフィンセントから「日本の美術館にはゴッホの絵はないのですか?」と聞かれ「国立西洋美術館でゴッホの薔薇(1889年)は見たことがあります」と答える箇所がありますす。「ひまわり」落札の20年以上前になります。 この絵は同氏著「常設展示室」の第4篇「薔薇色の人生 La Vie En Rose」にも取り上げられています。フィクションとして「ゴッホの薔薇」はフランスから持ち帰った祖父の死後は主人公「御手洗由智」の父が譲り受け、それがどんな絵なのか全く知らなかった主人公が父のアルツハイマー症の治療費のため絵を古物商に持ち込んだ事でゴッホの絵だという事を知るという展開です。祖母がフランス人(小説では藤田嗣治のかつての恋人)でフランス語が堪能ながらフランスへは一度も行った事がなくやっとフランスへ旅行できる時間の余裕が出来てパスポートを申請に行った御手洗がパスポート発行のアルバイト職員の多恵子と職場の壁に掛けられた「La Vie En Rose」と書かれた色紙について会話を始めたところから話は始まっています。最後は一体御手洗とはどんな人物なのかという謎を残しながら、御手洗が残した国立西洋美術館のチケットで多恵子がゴッホの薔薇と対面するところで小説は終わっています。 「薔薇」国立西洋美術館・松方コレクション ガシェ家遺族が「オルセー美術館蔵」に寄贈 気になってこの絵の検索を続けていると興味深い記事に出会いました。『(アルルでの耳切り事件の後)サン・レミの精神療養院入院中に描いたとされる作品。オーヴェールでゴッホの最期を看取った医師ガシェ家旧蔵。1922年、パリのローゼンベール画廊で松方幸次郎(国立西洋美術館の松方コレクションの基礎を築く)が購入。1944年(第二次世界大戦終戦の前年)にフランス政府に接収、1959年に寄贈返還により国立西洋美術館所蔵に』 今年3月~6月までシンガポールで開催された「ゴッホ没入型体験展示会」でゴッホの絵で一番高額で売買されたのはもう一枚ある油彩の「医師ガシェの肖像」だと知りました(82,500,000USドル)この絵はゴッホの弟テオの妻ヨーが個人コレクターに300フランで売ったのが始まりのようですが、現在所有者も含めて情報は開示されていないようです。ゴッホの絵は背景を知れば知るほど無尽蔵のように興味が湧いてきます。個人的には国立西洋美術館は2度行きましたが「ゴッホの薔薇」を見た記憶は無く機会があればじっくりと時間をかけて観賞したい絵の一枚です。