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テーマ:最近観た映画(54)
カテゴリ:日本映画(邦画)
姫の犯した罪と罰、 それは何か?
先日、スタジオジプリの新作、「かぐや姫の物語」を観てきました。 「かぐや姫の物語」HP http://kaguyahime-monogatari.jp/
(予告編) http://www.youtube.com/watch?v=RUnsfvLCWrk
今年は夏に宮崎駿の「風立ちぬ」が公開、既に興行収入は120億円に迫ろうとしています。宮崎駿と共に、ジプリの「車の両輪」である高畑勲の14年ぶりとなる新作、リュウちゃんは2つの意味で興味津々でした。
リュウちゃんが興味津々となった理由の一つ目は、高畑勲が、リュウちゃんと同じ三重県伊勢市の出身であると知ったことです。しかし、伊勢に住んでいたのは、どうやら幼児期だけだったようで、岡山県の朝日高校~東大仏文科を卒業しました。伊勢市出身と知って、ひょっとしたら、リュウちゃんの卒業した高校の前身の「宇治山田中学校」の出身なのではないかと淡い期待(笑)をしたのですが、その期待は見事に裏切られました。しかし、伊勢市出身というだけで、何やら近しい人物のように感じられるのです。
もうひとつの理由は、原作の「竹取物語」の発生した場所が、リュウちゃんの住んでいる近隣の奈良県北葛城郡広陵町であるという点です。 広陵町のキャッチフレースは、「かぐや姫のまち」です。、広陵町では、以下のような「かぐや姫伝説」を掲載したパンフレットを作成しています。 http://www.town.koryo.nara.jp/contents_detail.php?frmId=19
上記パンフレットによれば、「竹取物語」は、日本最古の物語とされ、「壬申の乱」(672年)頃に成立したとされています。竹取翁の名前が「讃岐造(さぬきのみやつこ)」と記されていて、この名前から、広陵町が、「かぐや姫の物語」の発祥の地であるとパンフレットは主張していますが、近所に住んでいるリュウちゃんと致しましては、この文は相当説得力がありました。
★原作の[竹取物語」とアニメとの相違点
以下に「竹取物語」原文と現代語訳を併記したサイトを貼り付けます。 http://www.h3.dion.ne.jp/~urutora/taketoripage.htm
高畑勲のアニメと、原作の「竹取物語」の大きな相違点は以下の点です。
原作では、「帳のうちよりも出ださず、いつき養ふ」とあるように、姫は生まれてから都に上るまで一歩も外に出なかったのですが、アニメでは自由に野山を駆け巡り、田舎の庶民の子供らしく、蛙や虫に好奇心を寄せます。 この部分及び都に上ってからも、お歯黒・引眉をせず、田舎育ちのままのお転婆娘だったというエピソードは「堤中納言物語」の中の「虫愛づる姫君」から取ってきたものだと思います(尚、宮崎駿は「風の谷のナウシカ」のヒロイン、ナウシカのキャラを「虫愛づる姫君」から着想したようです)
また、「捨丸」という賤民の子供と友達になります。2人は淡い恋心を抱くようになり、ラストに近いシーンでは、月からのお迎えを拒否して、2人で駈落ちすることを夢想しますが、それもかなわず、姫は月に帰って行きます。
「竹取物語」の中に、新しく「捨丸」のエピソードを挿入したことで、この映画は大きな膨らみと奥行きが加わったとリュウちゃんは思いました。
捨丸は、狩りをして山々を渡り歩く民の子供です。いわば、東北地方にあった「マタギ」のような生活をしています。彼らは都に出れば、最下層の「賎民」として扱われます。狩りが出来ない時は都に出て、泥棒行為をしなければ命を繋げないような貧しい生活をしています。しかし、生活は貧しくとも、心は豊かです。 地上に降りたかぐや姫が、唯一この地上で恋をした相手が、帝でも貴公子でもなく、賎民の捨丸だったことは、この映画の一番の見どころとなりました。
かぐや姫と捨丸が自由に空中浮遊するシーンは、 このアニメの最も美しいシーンでした。
★ かぐや姫の犯した「罪と罰」とは何だったのか?
高畑勲監督は、このアニメの製作に当たってのメッセージとして、以下のように語っています。 「迎えも来た月の使者は「かぐや姫は罪を犯したので、この地に下した~その罪の償いが終わったので、こうして迎えに来た」、 いったい、かぐや姫の犯した罪とは、どんな罪で、この地に下ろされたのが罰ならば、それが何故解けたのか?、、、」
この映画のキャッチフレーズは「姫の犯した罪と罰」です。 リュウちゃんがこの映画を観た最大の興味は、「果たして高畑勲監督は、姫の犯した罪と罰に、どういう解答を出すのだろうか?」という点でした。
しかし、映画を観た限りでは、明確な解答は得られませんでしたので、以下にリュウちゃんが映画から受けた印象から考えた見解を書いてみます。
★ 「姫が犯した罪と罰」のリュウちゃんの見解
(1)「竹取物語」で、月の世界は極楽(天国)、地上は地獄・餓鬼・畜生・・修羅・人間・天(地獄・煉獄)、悩みは無いが退屈な世界。 (2)キリスト教では、アダムとイブは、「知恵の木の実」を食べるという「原罪」を犯し、楽園を追放された。そして、以来、人間は苦労して働き、死ぬ運命になった。 (3)かぐや姫も、アダムとイブにような「原罪」を犯し、地上に下された。 (4)原作の「竹取物語」では、帝や貴公子などの醜さに嫌気がさし、月に帰っていったが、「かぐや姫の物語」では、原作にない「捨丸」の創造と、彼との「恋」を設定することにより、苦労はあっても人間世界の素晴らしさが姫には体感された。 (5)原作の「竹取物語」は、人間世界を「苦界」、月の世界を「極楽浄土」と対比し、「極楽浄土」に行くことが人間の理想であると説いた「仏教説話」の要素が強いが、「かぐや姫の物語」は、逆に、「苦界」である人間世界こそが、苦労はあっても天上の「極楽浄土」に勝るとも劣らない世界であるとの高畑勲の強いメッセージを感じた。
以上がリュウちゃんの見解ですが、 ご覧になった皆様は、 「姫の犯した罪と罰」に関して、 どんな感想を持たれたでしょうか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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