雲を突き抜け、天に伸びる「バベルの塔」
ブリューゲルの大傑作、24年ぶりの来日、
先日、大阪・中之島にある「国立国際美術館」で開催されている<オランダ・ボイマンス美術館所蔵・ブリューゲル「バベルの塔」展~ネーデルランドの至宝=ボスを超えて=>という展覧会を観に行って来ました。
<ブリューゲル「バベルの塔」展公式HP>
http://babel2017.jp/
ピーテル・ブリューゲル一世(1525年頃~1569年)の「バベルの塔」につきましては、その壮大で細密な画面に昔から憧れていました。
何と凄い細密画なのだろう!
実物は更に凄い絵に違いない、
実物を観たい!
大阪の「国立国際美術館」に足を運ぶのは、今年3回目です。1回目は1月開催の「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展、初めて見るティツィアーノ、ティントレットの宗教画に魅了されました。2回目は4月に行った「クラーナハ」展、腰のくびれたヴィーナスや妖しいオーラを放つ「ユディト」に魅せられました。
<ルーカス・クラーナハ「ユディット」、1530年ウィーン美術史美術館蔵>
午前10時30分、美術館入場、
アチャ―、大混雑だ!
お目当ての「バベルの塔」、ちゃんと観られるかな?
お目当ての「バベルの塔」は、展示会場の最後のフロアにありました。ここまで進むのに、約1時間、
「長い道程」でした(苦笑)
やっと「バベルの塔」が展示されている最後の会場に到着、ここも大混雑、
ありゃ、
実物の「バベルの塔」は実に小さい絵なのだ!
後で調べましたところ、今回展示されたブリューゲル晩年の「バベルの塔」のサイズは<縦59,9cm、横74,6cm>、キャンバスの号数はだいたい20号です。
このサイズ、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」<縦77cm、横53cm>より画面面積で10%大きいだけの細密画だったのです。
ブリューゲルは生涯に3点の「バベルの塔」を描いたとされていますが現存するのは今回展示のものと、後1点、1563年の「バベルの塔」の僅か2点です。
参考のため、1563年の「バベルの塔」の画像をUPします。
<ブリューゲル「バベルの塔」、1563年、ウィーン武術史美術館蔵>
上の1563年の「バベルの塔」画像の細密度から見れば今回展示の<1568年頃の「バベルの塔」よりも細密度において劣るように見えます。しかし、こちらのサイズは<縦114cm、横155cm>、画面の面積比では今回展示の「バベルの塔」の約8倍もあるのです。
1562年の「バベルの塔」の僅か1/8のサイズの今回の「バベルの塔」、
尋常ならざる細密画なのだ!
以下の図は、今回展示の「バベルの塔」の部分図です。
あの小さいキャンバスに無数の人が働いている。
このキャンバスには、何人の人が描かれているのか?
「バベルの塔の高さは何メートルなのか?
会場の出口近くに、東京芸術大学COI拠点が製作したオリジナルの「バベルの塔」を縦横各3倍(画面面積9倍)に伸ばした複製画が展示されていました。
その複製画の横に、以下のように書かれたパネルがありました。
「今回展示されているバベルの塔の実物の人物の身長は大体3mm,、
これらの人物の実身長を170cmとすると、ここに描かれている「バベルの塔」の高さは510mになる。
この絵には、約1400人の人物が描かれている。」
約20号のキャンバスに、何と1400人の人物が描かれている!
塔の高さ510mとは、東京タワーよりも180mも高い!
やはり凄い細密画なのだ!
ブリューゲルの細密画の例として、1562年に制作された「サウルの殺害」を以下に貼り付けます
。
この絵、<縦33,5cm、横55cm>、9号キャンバス相当、画面面積では「バベルの塔」の約40%に過ぎないのだ!
会場の外に、「AKIRA」や「童夢」などの細密漫画でしられる大友克洋(かつひろ)氏が描いた「バベルの塔」が展示されていました。
う~ん、こちらも面白い!
<大友克洋「インサイド・バベル>
「バベルの塔」は旧約聖書に出てくる話で、古代から様々な絵画が存在しますが、細密に描かれた絵画はブリューゲルが原点のように思われます。
以下に、幾つかの「バベルの塔」の絵画を紹介します。
<Frans Francken2世 , Joos de Momper2世 , 共作- の「バベルの塔」~1610年頃 ベルギー王立美術館蔵>
<ルーカス・ヴァン・ヴァルケンボルク 『バベルの塔』(1594年)、ルーブル美術館>
<ヘンドリック・ヴァン・クレーヴ「バベルの塔」>
<ギュスターヴ・ドレ「言語の混乱」~18655年>
以上のバベルの塔は絵画における想像上の建築物ですが、現在の実際の建築物は、絵画の想像を遥かに超えていますね。
現在、世界で一番高い建築物はドバイの「ブルジュ・ハリファ」」で、高さは828mです。
<ブルジュ・ハリファ>
かって日本には「東京バベルタワー」建築の構想があったようです。
<「東京バベルタワー構想図>
「東京バベルタワー」の想定データをウィキペディアから転載します。
• プロジェクト名:東京バベルタワー
• 提案者:尾島俊雄(早稲田大学教授)
• 提案期:地球サミット(1992年)
• 建設地:東京
• 地上高:10,000m
• 居住数:3,000万人
• 総面積:山手線の内側すべて
• 建設費:3,000兆円
• 基底面:110km²
• 総床面:1,700km²
• 鋼材量:10億トン
この構想はバブル絶頂期に提案されたようですが、バブルがはじけた現在から考えますと、余りにも馬鹿馬鹿しい構想ですね。
人間の欲望は旧約聖書の古代も現在も全然変わっていない。
人間の「永遠の業」なのかな?