ラストシーンに滂沱の涙!
累計900万部を売り上げた東野圭吾の感動作
これは「メビウスの輪」のように過去と現在を繋ぐ「再生」の物語だ!
先日、話題の日本映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」を観てきました。
<映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」公式サイト>
http://namiya-movie.jp/
例によりまして何の予備知識も無く映画館に出掛けました。
事前に見たのは新聞広告のスチール写真と西田敏行の写真だけ。
この映画、「三丁目の夕日」か「男はつらいよ」のようなレトロな映画なのかな?
しかし、映画が進むにつれて、物語の異様な構想が段々明らかになってきました。
さすが、ミステリーの巨匠、東野圭吾の原作作品、面白い!
<映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」ができるまで>
https://www.youtube.com/watch?v=pimcI9YSqmk&spfreload=1
物語は2012年9月12日の深夜、3人の不良青年が強盗を働き、盗んだ車で逃げるシーンから始まります。
まもなく車はエンスト、仕方なく不良青年の一人が事前に見つけておいた「ナミヤ雑貨店」という廃屋に日の出まで隠れることにします。
<ナミヤ雑貨店>
午前2時、鍵の掛かっていない「ナミヤ雑貨店」に侵入すると、まもなくシャッターの郵便物投函口に一通の手紙が投函されます。
その手紙は何と、1980年から32年の時空を超えて届いた「悩み相談の手紙」だったのです。
廃屋「ナミヤ雑貨店」はタイムカプセルという設定なのだ!
3人の青年は最初はこの不思議な「悩み相談の手紙」を無視していましたが、やがて一人の青年が、「この手紙に返事を書く」ことになり、段々3人共、手紙で返事を書くことにハマって行きます。
以後、次々と悩み相談の手紙が投函され、その手紙に返事を書くのですが、その中で悩み相談の手紙の投函者が、3人の不良青年と「一つの共通点」があることが分かってきます。
そして最後の投函者、
彼女の身分が判明することにより、物語は「メビウスの輪」のように発端に回帰し、感動のラストを迎えることになります。
この3人の不良青年が物語の「狂言回し」、
以下にこの3人を紹介します。
◎敦也→3人のリーダー格、最初は「悩み相談」の手紙をニヒルに無視していましたが、段々ハマって行き、「最後の投函者」への返事は彼が中心となって書くという設定です。
演じるのは、ジャニーズのグループ「Hey! Say! JUMP(ヘイ! セイ! ジャンプ)」のメンバー、山田涼介です。
◎翔太→まだ少年の面影を残す小柄な青年、演じているのは村上虹郎、彼は2014年に川瀬直美監督の映画「2つ目の窓」でいきなり主役に抜擢されたシンデレラボーイです。
◎幸平→大柄ですが気の弱い青年、演じているのは「寛一郎(かん・いちろう)」、
彼は名優「佐藤浩市」の息子(三国連太郎の孫)で、この映画が「俳優デビュー」作になります。
そして、もう一人の「狂言回し」役、
かって「ナミヤ雑貨店」の店主であり、悩み相談の発案者であった「波矢雄治」、演じるのは、今年70歳になる西田敏行です。
映画では80歳くらいの老人だが、
リュウちゃんより1歳若いのだ!
この西田敏行、まるで晩年の「寅さん」だ!
<最初の悩み相談の投函者~魚屋ミュージシャン「松岡克郎」>
実家が小さい魚屋、年老いた父が魚屋を経営している、息子の克郎が跡取りになることを期待しているが、克郎は芽の出ないミュージシャン志望、ミュージシャンをそのまま続けるべきか、親の魚屋を継ぐべきかという「悩み相談」の手紙を「ナミヤ雑貨店」に投函」します。
演じているのは、2007年に映画「バッテリー」でいきなり主役として俳優デビューした林 遣都(はやし けんと)です。
克郎は或る日、「ナミヤ雑貨店」のシャッターの前で、まだ発表する機会のない自作の曲をハーモニカで吹きます。
このメロディ、
不良青年3人組にとっては、懐かしく忘れられない曲だったのだ!
親の魚屋を継がず、芽の出ないアマチュア・ミュージシャンの克郎は、ある年のクリスマスに、「丸光園」という児童養護施設で慰問ライブをします。そこでエキセントリックな少女・セリに出逢います。
セリは克郎が歌うクリスマスソングには全く反応を示しませんでしたが、彼がアンコールとして演奏した曲には異常とも云える反応を示します。
この曲こそ、克郎が「ナミヤ雑貨店」のシャッターの前でハーモニカで吹いた曲だったのです!
幼い少女「セリ」を演じたのは、今人気絶頂の子役タレント、鈴木 梨央(すずき りお)ちゃんなのです。
(鈴木 梨央ちゃん)
克郎は慰問の夜、「丸光園」に泊まります。
翌朝未明、「丸光園」が火事、克郎は一旦脱出したのですが、「セリ」の弟が園の中に取り残される、弟を助けようとして再び猛火の園内に入っていく克郎、
結果、弟は助かりましたが克郎はここで死亡、
セリにとって克郎は、「弟の命の恩人」になったのです。
後年、セリは克郎が果たせなかったプロ・ミュージシャンの夢を果たします。
ヴォーカリストの彼女の一番大切な歌は、「ナミヤ雑貨店」の前でハーモニカで吹いたあのメロディ、セリがクリスマスに初めて聞いたメロディ、
「REBORN(リボーンー再生)」だったのです。
<成人したセリ(門脇麦)が歌う「再生」>
https://www.youtube.com/watch?v=GMUiipgOPVY
(門脇麦の演じる歌姫「セリ」)
何故、不良青年3人組は「再生」を懐かしく感じたのか?
それは3人組が全員「丸光園」の出身者だったからなのです!
<2番目の悩み相談者~グリーンリバーこと「川辺ミドリ」>
この悩み相談は3人組に来た手紙ではなく、死ぬ直前の波矢雄治に届いたものです。
「グリーンリバー」と名乗るは「妊娠したが、相手の男性が妻子持ちなので困っています。子供を産むべきでしょうか?」という相談を投稿します。
この相談に対し、波矢雄治は、
「大事なことは生まれてくる子供が幸せになれるかどうかだ。貴女に子供を絶対に幸せにするという覚悟があるのなら産みなさい、その覚悟がないのなら産まないほうがいい」
と回答します。
それから約2年後、新聞に小さな事故の記事が出ます。
「川辺ミドリさん、1歳の娘を乗せた軽乗用車で海に転落、川辺さんは死亡、娘は奇蹟的に助かった」
この記事を読み、波矢雄治は愕然とします。
川=リバー、ミドリ=グリーン、川辺ミドリ=グリーンリバー
間違いない、あの時の悩み相談のグリーンリバーさんだ!
「俺の返事で彼女は幸せになれなかった、俺の返事は間違っていたのか?」
波矢雄治が死ぬ直前、「グリーンリバーの娘」から感謝の手紙が投函されます。
<グリーンリバーの娘こと、川辺映子を演じた山下リオ>
「私が1歳の時、母親が事故死しました。同乗していた私は奇蹟的に助かり、「丸光園」という児童養護施設に預けられ、ここで成長しました。幼い頃は母のことは全く知らなかったのですが、中学生になった時、ある機会に自分が母親に無理心中させられたことを知りました。
<自分はうまれてこないほうが良かった人間なのだ!>、
絶望し、自殺を図りましたが未遂に終わり、病院に入院しました。その時に見舞いに来てくれたのが「丸光園」で唯一の友人である「セリ」でした。「セリ」から「丸光園」に保管されていた母の形見の「ナミヤ雑貨店からの返事の手紙」を見せられました。
<この手紙を死ぬ間際まで大切に持っていたということは、母は私を幸せにしようと最期まで考えていたのだ、車の転落は無理心中では無かった、仕事に疲れた母が居眠り運転をしてしまった事故だったのだ!>
今、私はミュージシャンになった「セリ」:のマネージャーをしています」
この手紙、2012年の未来から1980年の波矢雄治に時空を超えて届いた手紙だったのです!
<3番目の、そして最後の悩み相談者~迷える子犬こと「田村晴美」>
少し「ネタバレ」が過ぎたような感じがしています。
この映画は、「迷える子犬」さんこと、「田村晴美」の4通目の手紙で、「メビウスの輪」のように全体の話が有機的に繋がり、「感動のラスト」を迎えます。
「田村晴美」を演じたのは、奈良県出身の女優・尾野真千子、15歳の時に河瀬直美監督に見いだされ、河瀬監督の出世作「萌の朱雀」でデビューしました。
「ナミヤ雑貨店」の奇蹟」で、尾野真千子は、19歳から51歳までの「田村晴美」を演じました。
実はリュウちゃん、この映画を2回観たのですが、2回共、
「若い時の田村晴美は尾野真千子とは別の女優が演じている」と思ってしまいました。2回観た後でネットで調べ、初めて尾野真千子が一人で演じ切っていると判った次第です。
尾野真千子の演技力、凄い!
<「REBORN(再生)>
映画の中でミュージシャンになった「セリ」(門脇麦)が歌う「REBORN」は、シンガー・ソングライターの山下達郎の50枚目のシングル盤として2017年9月13日に発売されました。映画ではエンディングで流されます。
<山下達郎>
<山下達郎「REBORN」>
https://www.youtube.com/watch?v=HX5St4TS0cA
この映画を2回観たリュウちゃん、既にリュウちゃんの心の中ではネタバレしているので、2回目は涙ウルウルにはならないだろうと思っていたのですが、
あにはからんや、2回目のほうが一層涙ウルウル!
この映画はリュウちゃんの今年のベスト映画になったのだ!
2回映画を観たあとで原作を読みました。
原作は5話のオムニバス中編小説集、映画はこのうち、3話を取り上げています。
原作も凄く良かったですよ!