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リュウちゃんの懐メロ人生

リュウちゃんの懐メロ人生

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2022年02月20日
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カテゴリ:美空ひばり
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​
16歳のひばりちゃん、
この年は、
「マドロス歌謡」元年だったのだ!


(マドロス姿のひばりちゃん)

​(まえがき)​

今回はひばりちゃんの16歳の時に発売された楽曲について書いてみます。
​16の時の歌は、昭和28年5月29日から昭和29年5月28日の間に発売された歌です。具体的には「唄祭り八百八丁<78番>」ら「母恋い扇<107番>」までの29曲です。
​(洋楽事始めの年・民謡事始めの年)
​​上記、29曲は、リュウちゃんが持っている35枚組の「美空ひばり大全集」に収録されている曲数なのですが、ひばりちゃんは16歳の時から「洋楽」のレコーディングを開始しました。昭和28年6月1日発売の「上海/エル・チョクロ」を皮切りに、16歳の時だけでも、「アゲイン」、「チャルメラそば屋」、「ゆうべはどうしたの」、「ンゴに二人を」、「スターダスト」、「ジングルベル」と、計8曲の「洋楽」をリリースしています。
​​
ひばりちゃんの「洋楽」は、オリジナルの英語などの歌詞に、一部に日本語の訳詞を入れたスタイルでロ幾音されています。
​一例として、以下に「ジングルベル」の動画を貼り付けます。​
​<美空ひばり「ジングルベル」>​→ここをクリック(以下同様)
​​​また、この年には、初の民謡として、「会津磐梯山」「茶切節(ちゃっきりぶし)」の2曲を発売しました。

​​<美空ひばり「茶切節」>
民謡といいましても、「茶切節」は、昭和2年に(詞):北原白秋、(曲):町田​​佳声(かしょう)のコンビによって作られた「新民謡」なのです。昭和6年、鶯芸者の「市丸(いちまる)」の歌唱でビクターからレコードが発売され、大ヒットしました。
​​<市丸「茶切節」>

(市丸)

​​​「会津磐梯山」は、「茶切節」とは違って、古くからあった「古民謡」なのですが、こちらもビクターの鶯芸者であった「勝太郎」の歌唱によるレコードで全国的にヒットしました。
​​​
ひばりちゃんの民謡は、
コロムビアのライバルだったビクターの
市丸、勝太郎への挑戦だったのか?

という次第で、16歳のひばりちゃんは、邦楽29曲、洋楽8曲、民謡2曲の計39曲のレコードを発売することになりました。16歳の時に公開された映画も、全て主演作で、9作品が公開されています。

1年間で主演した映画が9本!
レコーディングした歌が39曲!
これじゃ、高校に通っている暇が無い!

さて、楽曲に入ります。

​(34)<78番>「唄祭り八百八丁」


​​
★発売日:昭和28年6月1日、★作詞・西條八十、作曲:万城目 正、★映画「ひばり捕物帳 唄祭り八百八丁」主題歌、★カラオケあり、★評点:A
​​​<映画「ひばり捕物帳 唄祭り八百八丁」、51分バーション>

​​​​​この歌、「お祭りマンボ」に続くひばりちゃんの「お祭りソング」第2弾なのですが、言葉の「切れ味」が小気味よく、リュウちゃんも大好きな歌なのです。リュウちゃんと同年配の近所のカラオケ店のオバサン曰く。「お母さんが好きだった歌」

オバサンのお母さんと云えば、
生きていれば今年100歳!
リュウちゃん、
まだまだ青二才なのだ!

​​(35)<番外>「上海」


★発売日:昭和28年6月1日、★作詞:B.Hilliard|M.Delugg、日本語詞:奥山靉(あい)、★カラオケ無し、★評点:A、

​​ひばりちゃんの初めてのジャズ(洋楽)のレコーディングです​(この歌は35枚組の「美空ひばり大全集」には収録されていませんので、<番外>となります)​​​
​この歌は、アメリカの人気女優で歌手のドリス・ディが昭和26年に29歳の時にリリースしました.


(ドリス・ディ)
​​<ドリス・ディ「上海>
以下の冒頭の英語の歌詞を挙げてみます。

♪~Who's gonna kiss me?
Who's gonna thrill me?
Who's gonna hold me tight tonight?
Why did I tell you I was goin' to Shanghai?
I wanna be with you tonight.
Why did I holler I was goin' to Shanghai?~♪

この冒頭の部分、ひばりちゃんの歌唱と、ドリス・ディの歌唱を聴き比べてみて下さい。

どちらがドリス・ディで、
どちらがひばりちゃんか、、
英語の部分だけ聴いた限りでは、
区別がつかない!

リュウちゃんは英会話が全く出来ない人間ですが、以前、知人の英語ペラペラのジャズ評論家に、ひばりちゃんの「上海」の英語について問い合わせたことがあります。

​知人曰く。「<上海>のひばりの英語は、ネイティブの英語のように聞こえる」とのことでした。
英会話が出来なかったひばりちゃんが、
ネイティブと同じ発音で歌える!
​奇蹟だ!​

おそらく、ひばりちゃんは、ドリス・ディの「上海」を繰り返し聴き、耳でこの歌を完全に自分のものにしてしまったのでしょうね。
​​美空ひばりオフィシャルサイトによりますと、ひばりちゃんは3歳の時に、小倉百人一首を殆ど暗記してしまったようですが、このエピソードも、ひばりちゃんの「異常ともいえる耳の良さ」を示しています。
​​
​ひばりちゃんの「上海」のB面曲は、スペイン語の「エル・チョクロ」で、この歌もひばりちゃんは後半でスペイン語で歌っています。こちらは確認していないのですが、おそらく、スペイン人が聴いたとすれば、ネイティブなスペイン語だと思うのではないかと思っています。
​​​​<美空ひばり「エル・チョクロ」>

ひばりちゃんの洋楽
ネイティブの歌手と遜色のない
仕上がりなのだ!
​​​
​(36)<84番>「チャルメラそば屋」​​
★発売日:昭和28年8月10日、★作詞作曲:ボビー・ノートン、日本語訳詞:奥山靉、★カラオケ無し、★評点:A、

35枚組の「美空ひばり大全集」に収録された唯一の洋楽曲です。

邦楽オリジナル曲オンリーの筈の
「大全集」に、
何故、1曲け洋楽曲が収録されたのか?

​​​実はリュウちゃん、今の今まで、てっきりボビーノートンはアメリカの著名なカントリー・シンガーで、「ャルメラそば屋(Soba Song)」もアメリカで録音され、日本も聴かれるようになった歌だと思っていたのですが、下記のボビー・ノートンの「チャルメラそば屋」の動画を見ました所、このレコードのレード番号が「JL-47番」であることが分かりました。

「LJL-47」番!
この「JL」は、
当時の日本コロムビアの、
主として邦人アーティストが
「洋楽」を吹き込む時に使われた記号なのだ!

​​因みに、ひばりちゃんの「上海」以前のレコード番号は、全て<A-○○番>というレコード番号になっています。例えば、デビュー曲の「河童ブギウギ」は、​​
​​​​「A-570」番、「唄祭り八百八丁」「A-1696」番、といった具合です。ひばりちゃん初の「JL」曲は上述の「上海」で、レコード番号は「JL-41」番なのです。
​​​​
​このことからから考えますと、恐らくボビー・ノートンは、当時、日本に滞在していたアメリカ人で、何らかの機会に、日本コロムビアで「チャルメラそば屋」をレコーディングし、それが、ひばりちゃんの「洋楽」にピッタリだということで、ひばりちゃんの「洋楽第2作目」の曲として採り上げられたのではないかとリュウちゃんは推測するのです。
それにしても、
ひばりちゃんの謳い回しは、
お見事!

ですね。

​(37)<85番>「山葡萄実る頃」


​(映画「山を守る兄弟」、北上弥太郎と美空ひばり)
★発売日:昭和28年9月15日、★作詞:西條八十、作曲:米山正夫、★映画「山を守る兄弟」主題歌、★カラオケ:一時あり、★評点:A、
​​<映画「山を守る兄弟」62分版>
♪~あ~~~~~~
甲斐は山国 笛の音が
ふもとにひゞく 秋祭り
雲は流れる 夕日は落ちる
山の葡萄も赤くなる~♪

清新な抒情歌です。

​おそらく、この歌は、後年、美空ひばりもステージで歌うことは無く、ひばりファンにも注目されることも無く、歴史の中に埋もれてしまった「幻の名曲」なのですね。
勿論、リュウちゃんも「大全集」で初めて聴いた曲です。聴いた当初の印象は薄かったのですが、何回も聴く内に、歌の良さがジワジワと胸に迫って来たのです。
レーザーディスクの時代、カラオケがあり、近所のカラオケ店で一度だけ歌ってみたことがありますが、やはり胸が締め付けられるような感動を覚えたのです。

リュウちゃんにとっては、
「山葡萄実る頃」は、
「津軽のふるさと」を上回る
感動の抒情歌なのだ!

​​(38)<88番>「可愛いティティナ」

★発売日:昭和28年12月10日、★作詞・作曲:米山正夫、★カラオケ無し、★評点:B、
このレコードは「洋楽」として、「JL-69」番というレコード番号で発売されましたが、米山正夫の作詞作曲で、ひばりちゃんのオリジナル曲なのです。

タイトルの「可愛いティティナ」、
はて、「ティティナ」という名前、
どこから来たのだろう?

​昭和13年、日本でチャップリンの名作「モダン・タイムス」が公開されました。​
​この映画の中で、チャップリンは、「ティティナ」という意味不明な歌を自らの肉声で披露しました。



<チャップリン「モダン・タイムス」より、「ティティナ」>
​​
チャップリンの「ティティナ」、リュウちゃん、今の今まで、てっきりチャップリン自らが作詞作曲したオリジナル曲だと思い込んでいたのですが、実はこの曲は大正11年(1922年)、ロシア系フランス人の作曲家、​レオ・ダニダーフ​によって作曲された「フランスの流行歌」だったのですね。
この歌は「モダン・タイムス」公開以前にかなり流行したようで、日本では「羽衣(はごろも)歌子」という歌手によって、昭和6年にレコーディングされました。
​​また、昭和28年には、生田恵子という歌手の「東京ティティナ」という、歌詞のみを替えた「ティティナ」のレコードがビクターから発売されました。


​(生田恵子)
​ひばりちゃんの「可愛いティティナ」は、オリジナルの「ティティナ」とは全く違う、米山正夫のオリジナル曲です。ちょっとロシア民謡の「カチューシャ」などを思い起こす歌ですね。
​(40)<89番>「ただ何となく」
<ただ何となく>​​
★発売日:昭和28年12月10日、★作詞・作曲:米山正夫、★「可愛いティティナ」のB面曲、★カラオケ無し、★評点:A、

​「可愛いティティナ」のB面曲です。タイトルのように、何気ない歌ですが、エレガントで、リュウちゃんにとりましては好ましい歌なのです。

​(41)<92番>「楽しい日曜日」



<楽しい日曜日>​​
★発売日:昭和29年1月15日、★作詞:松坂直美、作曲:万城目 正、★映画「お譲さん社長」挿入歌、★カラオケ無し、★評点:A、
​上掲の映画「お譲さん社長」の中で、映画のストーリーとは全く関係のない歌として歌われます(上掲の映画の7分40秒から歌が始まります)
1番の歌詞は以下です。

♪~みどりのそよ風甘く うちつれ道ゆく人の
 軽い足どりも なぜかしら夢さそう
 楽し日曜 嬉し日曜
 さあさ行こうよランララ~ 山越え野越え~~♪

​昭和♪20年代、日本の公官庁や大企業では、週休1日半(半ドン)が当たり前でした。公官庁や大企業で、「完全週休2日制」が定着したのは、昭和55年以降なのです。​
​それだけに週に一度の日曜日は、サラリーマンにとりましては、週休2日制になった現代よりも遥かに「貴重な休日」だったのですね。上掲の歌詞には、「貴重な休日」の楽しさが、よく表現されていると思います。​
しかし、歌詞の楽しさとは裏腹に、メロディは短調で付けられていて、何やら物悲しい感じです。

「貴重な休日」の翌日には、
厳しい仕事の月曜日、
月曜日のことを考えると、
憂鬱になる。

ということを、このメロディは表現していると、リュウちゃんは思っているのです。

​この歌詞は、藤山一郎の「丘を越えて」を思い起こす部分があります。
<藤山一郎「丘を越えて」>
​​
「丘を越えて」は底抜けに明るい歌ですが、ひばりちゃんの「楽しい日曜日」は陰影の濃い、少しメランコリックな歌です。

でもリュウちゃんは、
断然、「楽しい日曜日」が好きなのです!

(42)<94番>「ひよどり草紙」


(映画「ひよどり草紙」の中村錦之助と美空ひばり)
★発売日:昭和29年1月20日、★作詞:西條八十、作曲:万城目 正、★映画「ひよどり草紙」主題歌、★カラオケ無し、★評点・B、
​かって「東映チャンバラ映画」の若手スターとして絶大な人気を誇った中村錦之助(後の萬家錦之助)の映画デビュー作です。
中村錦之助は昭和7年生まれ、ひばりちゃんより5歳年上で、映画出演時には21歳の青年でした。歌舞伎界の御曹司で、4歳から歌舞伎の舞台に立っていましたが、なにしろ四男坊だったので、当時は歌舞伎で主役級の役者になることは至難の業だったようで、人気がありながら端役に甘んじていました。

そこに美空ひばりの新芸術プロダクションから映画出演のオファーを受け、歌舞伎界から映画界に転出、「ひよどり草紙」が映画出演第1昨となり、この映画は松竹で配給されました。

​リュウちゃんも幼い頃は中村錦之助のチャンバラ映画の大ファンだったのですが、リュウちゃんが錦ちゃんのチャンバラ映画を初めて観たのは,「ひよどり草紙」の10か月後に公開された東映の「紅孔雀(第1部)」だったのです。
中村錦之助は、
ずっと東映の大スターだと思っていたが、
デビュー映画は松竹だったのだ!

​中村錦之助は、昭和29年2月10日封切りの松竹映画「ひよどり草紙」で映画デビューの後、同年3月24日封切りの新東宝映画「花吹雪御存じ七人男」に出演、その後、東映に移籍し、同年4月27日には、早くも東映デビュー作で、中村錦之助の出世作となった「笛吹童子第1部どくろの旗」に主演しています。
​​<映画「笛吹童子完結編・満月城の凱歌」>
尚、中村錦之助は、デビューした昭和29年だけで、何と!、18本もの映画に主演、一挙に人気スターになり、東映の救世主になりました。

​(43)<95番>「鳥笛吹けば」
<鳥笛吹けば>​​
★発売日:昭和29年1月20日、★作詞:西條八十、作曲:万城目 正、★映画「ひよどり草紙」主題歌、★カラオケ無し、​​★評点・、​​
映画「ひよどり草紙」のラストシーンで1番だけ歌われる挿入歌であり、歌の「ひよどり草紙」のB面曲です。

この歌、
​​「涙の白桔梗​​​<46番>​​」に続く、
​リュウちゃんの​​
​​
最高評点の歌なのだ!

この歌も、35枚組の「美空ひばり大全集で初めて聴いた歌です。

以下に歌詞を全部書いてみます。

​♪~​
1、 可愛い小鳥を呼ぶように 君呼ぶ笛があったなら
面影おぼろな若衆まげ 赤い灯りの江戸恋し
ピロローピロロー ピロロロピロロ~<(※)2、3番も繰り返し>
2、 青葉若葉の峠道 しぐれに濡れる街道で
鳴らせば心も泣けてくる なぜか寂しい笛の唄
3、 君を思って旅をゆく わたしも小鳩 流れ鳥
落葉松林を吹く風に 雪の信濃路 陽が落ちる~♪

リュウちゃんがこの歌を何故、最高評点にしたのかをちょっと書いてみます。
一番の理由は、歌詞の一語一語まで丁寧に歌ったアーティキュレーションの見事さです。
​​例えば、1番の冒頭の♪~可愛い小鳥を呼ぶように~♪「小鳥」の歌唱表現です。
​​
​​​音譜では「小鳥」は「ラードーシ」となっていますが、「ラ」音から「ド」の音に3度高く移行する時に、ファルセット(裏声)のようにスムースに、気持ちよく移行します。次の「シ」音は、単なる「シ」音ではなく、「シドシ」と、軽い「節回し」を入れて、「小鳥」という僅か3音の「詞」を見事に表現するのです。
​​​
もう一つ例を挙げます。3番の後半の
♪~落葉松林を吹く風に~♪の部分です。
​​​​​​ここの部分は音符では「シシーラシ―ドシラーシミーレーミーファラー♯ソミー」となりますが、「落葉松林を」の部分の音符「シシーラシ―ドシラーシミー」を、しかりと格調高く歌うことによって、この落葉松林の存在感がくっきりと浮かび上がります。また「吹く風に」の部分は、音符では「レーミーファラー♯ソミー」ですが、ひばりちゃんは「風に」を「ファラー♯ソラ♯ソミー」と、軽い節回しを入れることによって、臨場感あふれる「風」を見事に表現するのです。
​​​​​​
​ちょっと突飛な比較になりますが、「鳥笛吹けば」のひがりちゃんの「風」は、シューベルトの名歌曲「ズライカ1」の巻き起こる東風を思い起こします。
♪~Was bedeutet die Bewegung?
Bringt der Ost mir frohe Kunde?~♪

この風のそよぎは何を告げようとしているのでしょう?
東風がうれしい便りを運んできてくれたのでしょうか?

この歌のひばりちゃんのアーティキュレーションの凄さを挙げると、きりがありませんので、この辺で止めますが、
ひばりちゃんの「鳥笛吹けば」は、
聴けば聴く程に歌の世界が胸に迫って来て
心打たれれる名歌なのだ!

と、リュウちゃんは思っているのです。
​皆様も騙されたと思って、この歌を歌詞を参照しながら、10回ほど聴いてみて下さい。きっと、「涙ウルウル」になること、請け合いですよ。
​(44)<98番>「伊豆の踊り子」


<伊豆の踊子>​​​
★発売日:昭和29年3月20日、★作詞作曲:木下忠司、★映画「伊豆の踊子」主題歌、★カラオケあり、★評点:A、
​​​映画「伊豆の踊子」はひばりちゃん初の「文芸映画」です。これまでの映画と違って、一女優として、川端康成原作の「踊り子の薫(かおる)」をシリアスに演じています。この映画の音楽を担当したのは、「二十四の瞳」、「喜びも悲しみも幾年月」なで知られる木下恵介監督の実弟で、木下監督の映画の大半の映画音楽を担当した木下忠司、「伊豆の踊子」では、映画音楽と共に、上記2曲の主題歌の作詞作曲も担当しているのです。
​​​
ひばりちゃんの主題歌「伊豆の踊子」は、映画の中では、伴奏を使わずに、鼻歌という感じで朴訥に歌われます。
以下に歌詞を書いてみます。

♪~三宅出るとき 誰が来て泣いた 石のよな手で親様が
  まめに暮らせと ほろほろ泣いた 椿ほろほろ散っていた
  江島生島別れていても 心逢う島(大島)燃ゆる島
おらが親様離れていても 今度逢うときゃ花も咲く~♪

​​普段のひばりちゃんの歌謡曲とは違い、哀切極まりない民謡調の抒情的な歌曲です。リュウちゃんもこの歌はカラオケでよく歌うのですが、「♪~心逢う島(大島)燃ゆる島~♪」の部分で「涙ウルウル」になってしまうのです。
​​
​(45)<99番>「いでゆの里」
<いでゆの里>​​
★発売日:昭和29年3月20日、★作詞作曲:木下忠司、★映画「伊豆の踊子」主題歌、★カラオケ無し、★評点:A、
映画では、この歌のメロディが通奏低音のように常に場画れています。A面の「伊豆の踊子」よりも、もっと哀切極まりない抒情歌です。

以下の歌詞により、踊り子の一行が辿った道を紹介するという趣向になっています。

♪~南(みなみ)風吹きゃいで湯の里に 
赤い椿の花が咲く
 椿赤けりゃ桂の恋も 燃えて修善寺湯の煙
 湯ケ野湯ヶ島峠の下で 逢うに逢われぬしぐれ雨 
 万二万三は天城の峰よ 沖の七島見てござる
 天城越えれば下田ノ港 オ吉恋しと千鳥鳴く~♪​

松本清張の初期の傑作短編「天城越え」、
この歌詞からタイトルを考えたのか?
石川さゆりの「天城越え」も同じなのか?

​​尚、この映画で主人公の「私(一高生)」を演じた石濱 朗(いしはま あきら)は、ひばりちゃんより2歳年上の2枚目俳優で、「ひばりの初恋の人」なのです。​​
結婚寸前までいった仲だったようですが、結局は失恋に終わったようです。


(石濱 朗)

​(46)<104番>「ひばりのマドロスさん」



<ひばりのマドロスさん>​​
★発売日:昭和29年5月15日、★作詞:石本美由紀、作曲:上原げんと、★カラオケあり、★評点:A
​(47)<105番>「さよなら波止場」
​★発売日:昭和29年5月15日、★作詞:石本美由紀、作曲:上原げんと、★「ひばりのマドロスさん」のB面曲、★カラオケ無し、評点;特A、​

​ひばりちゃん初の「マドロス歌謡」です。​
​​​​「マドロス」とは、オランダ語で「船乗り」のことで、「マドロスさん」とは「船乗りさん」という意味になります。またマドロスさんとは「外国航路の船乗りさん」で、決して「国内航路の船乗りさん」ではないようです。
​​​​
​​「マドロス歌謡」というジャンルは、リュウちゃんが俄か調べした限りでは、昭和14年発売の<岡 晴夫「港シャンソン」>が「最初のものではないかと思われます。
​​<岡 晴夫「港シャンソン」>


(マドロス姿の岡 晴夫)
考えてみますと、戦前には外国航路の船乗りさんと云えば、軍艦に乗り込む海軍の水兵さんが殆どという時代で、客船などは殆ど運航していない時代でしたので、
​歌謡曲でも「マドロスもの」は一つのジャンルとして成立しえない時代だったのですね。
​戦後、マドロス歌謡は、やはり岡 晴夫の「憧れのハワイ航路」で一挙に花が開きました。​
以下に、戦後の「マドロス歌謡」を幾つか挙げてみます。

岡 晴夫「雨の波止場」、「マドロスの唄」、「憧れのブルーハワイ」、
小畑 実:「アメリカ通いの白い船」、「船乗りシャンソン」、田端義夫:「ロマンス航路」、「肩で風きるマドロスさん」、藤島 桓夫「初めて来た港」、「帰りの港」、、、、

​​以上挙げた歌は、皆、男性歌手による「男歌」です。でも、ひばりちゃんの「マドロス歌謡」は、女性が憧れる「素敵な男性のマドロスさん」という視点で歌詞が書かれています。
​​
以下にひばりちゃんの「マドロス歌謡」を、出来るだけ挙げてみます。

「ひばりのマドロスさん<104番>」、「さよなら波止場<105番>」、「あの日の船はもう来ない<132番>」、「君はマドロス海つばめ<178番>」、「港は別れてゆくところ<179番>」、「波止場だよお父つぁん<186番>」、「港町十三番地<195番>」、「浜っ子マドロス<198番>」、「波止場小僧<202番>」、「青い海原<206番>」、「港町さようなら<208番>」、「ご機嫌ようマドロスさん<220番>」、「パパの故郷<221番>」、「三味線マドロス<222番>」、「白いランチで十四ノット<234番>」、「若い海若い船<<252番>」、「波止場へ行こうよ<253番>」、「初恋マドロス<278番>」、「哀愁波止場<280番>」、「ひばりの船長さん<281番>」、「鼻歌マドロス<293番>」、「小さな波止場町<294番>」、「波止場の道を歩こうよ<331番>」、「こよい港に降る雨は<332番>」
「お久しぶりねマドロスさん<345番>」、「港は心のふるさと<346番>」、

​フ~、26曲もあった!​

​リュウちゃんはカラオケでひばりちゃんの「マドロスもの」をまとめて歌う時には、必ず「ひばりのマドロスさん」から歌い始めます。
上原げんとの軽快なメロディ
海の匂いが濃厚なマドロス歌謡、
ひばりちゃんの歌は、
益々、冴え渡るのだ!

​​​​​​​​​​​

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最終更新日  2022年05月16日 10時23分42秒
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