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ある日の朝と夜(2)そのうち木が焼けはじけ飛び散る『パチパチ』という音が聞こえてきた 『和室だ』 とっさに居間から和室の戸を開けた とたんに照明器具の電灯が割れてはじけ飛んできた 頭から浴びた 掘りごたつからキャンプファイヤーが立ち上っていた 飾ってあった人形ケースや花瓶が次々割れ燃えて行く 居間に戻り電話を手にするが番号が見えない 外で掛けようと思ったがモジュラーのコードが届かない 電話を放り投げて窓に向かう 鍵がかかっていて必死になった もう息が続かない 窓を叩きまくってやっと鍵を見つけ開けて飛び出した 後ろを振り向くとカーテンが1秒もしないで消えた 近所に大声で家事を伝えながら玄関に戻った 深呼吸をした後 娘に声をかける 『ママ ばあばを助けに行くから ここで待ってて』 娘の『いやだー 行かないで―』 と 泣き叫ぶ声を背に家に飛び込んだ 洗面でタオルを濡らし 口と鼻をふさいだ まだ階段まで火が来てない 思い切って駆け上ったが 煙がひどくて先に進めない 苦しい あと少しなのに 濡れタオルは全く役に立たなかった 母は燃え盛る和室の真上の部屋に寝ていた 犬たちがいる娘の部屋にも行けない 『逃げて―』 と叫ぶのが精一杯 その時 外から 『飛び降りろ―』 と叫ぶ声が聞こえた 主人だ まだ2階にいたのだ そう思った瞬間 足が滑りバランスを失い 下まで駆け下りるように転げた 主人は煙から逃げて窓にぶら下がっていた それを見つけた近所の人が叫んだのだった 玄関まで行くと主人が2階から落ちてきた 『大丈夫?』 『うん』 2階の窓と地面の間に駐車場の屋根があり それがクッションになったのだ 私は主人に玄関の靴や自転車の鍵や息子の鞄を渡した そして慌てて車を車庫から出したのだ 消化活動の邪魔にならないように 噴き出た火で車が爆発しないように その反面 『早く母を助けなければ こんな事をしている場合じゃない』 そう泣き叫びながら エンジンを掛けたのを覚えている 再度 玄関から入ろうとしたら もう火が階段をなめていた 燃え盛る炎の中に母と愛犬を残し 私は何をしているのか 炎を見ながら 気が狂う様になっている自分 泣き叫ぶしか出来ない自分 なす術がない無力な自分 何が間違ったのか 何故助けられなかったのか 今でも自問自答を続けている 下に続く
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最終更新日
2011年11月28日 10時56分36秒
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