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思い出に抱かれて(2)担架で運ばれる前 警察の方に弟に連絡をしてくれるように頼んだ 父を預けたかったのだ 会社名が分かっても部署が分からないと繋がらなかった そこへ近所の方が一枚の紙切れを持ってきてくれた そこには弟の住所と電話番号が記されていた 母が 『もし私達に何かあった時 ここに連絡してほしい』 と 私達がアメリカに赴任していて両親二人だけで生活していた時に渡していたものだった 燃えている家の中にいる母に助けられたのだ 弟が来てくれていたので 私が入院していても 父はどうにか気を保てていた 弟は葬儀の手配 私は何か助かっているものは無いか火事の後片付けを始めた と、同時に住む家も探さねばならなかった そこへ違う近所の方から 『家を早くどうにかしてほしい』と申し入れがあった 怖くてしようがなかったそうだ 家の上にはカラスも舞っていたからだ 慌てて業者を探し家全体にカバーを掛けてもらった 物は水と灰を浴びてドロドロだった テレビが溶けて引き出しの周りを覆い塞いでいた その中に母子手帳やパスポートがあり煙や水が入らなかったため無事だった 手作りしたウェディングドレスや息子の七五三の着物が焼け溶けた物が やはり下の箱の口を塞いでいた 箱の中には結婚式で付けた私のアクセサリー類があった。 冷蔵庫の後ろの壁は燃えずに助かっていた その壁の裏に食器を箱に入れたまま置いてあった 階段はところどころ燃え落ちていたがどうにか登れた 母が寝ていた部屋は畳は落ちていたが 板間の家具は落ちてなかった そこには両親の衣類があった 娘と息子の部屋は天井が落ちていたが床は抜けてない 息子の机の下の奥に卒業アルバムが置いてあり カバーを外せば中は無事だった 缶に入れてあった新品の文具品もきれいだった 私達の寝室はほとんど燃えていたが 奥のクローゼットの一部は無事だった 写真の束が灰の中から見つかり一枚一枚洗って乾かした アルバムの中の写真はビニールを剥がすと写真まで剥げたので駄目だった 焦げてはいないが煙で黒ずんだ服はフルーツ洗剤に三度浸けたら着られるようになった そうやって助けた他の物も 水を浴びた物は月日が経ったらひび割れた すべて失った気でいたけれど 少しでも懐かしい物が回復するとうれしかった 一人で黙々とやり続け ため息の出る毎日 預金口座 カード類の回復・病院の診察券・運転免許証など全てが有料 家の取り壊し・葬儀の費用・借りる家の資金・生活用品の購入も含めると膨大な費用 火災保険は入っていたのかさえ分からず 探してみたが見つからなかった そして家の建て直しが始まった それら苦しかった思い出はテディとボビー2の楽しい思い出と共に心のアルバムにしまい ページを閉じようと思う ルビーおやすみ中
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