8月15日が近づいてくると
戦争、原爆の文字をやたら目にする。
子どもの頃、白装束の姿で、片足が無くアコーディオンを弾きながら
電車に乗り込んでくる人がいた。
彼が幼い私に微笑みかけた。
私は顔がこわばり微笑を返すことが出来なかった。
「あの、おじさんどうして足が無いの?」母に尋ねようとしたが
どうしても聞けなかった。
私の手を引いている母は、彼が近づいてくると、
黙って彼の手にある帽子の中に小銭を入れた。
傷痍軍人だと知ったのは後のことである。
その後何回か電車の中で、同じ人かどうか分からないが
アコーディオンを手にした傷痍軍人を見かけた。
いつも軍歌を演奏していた。
時がたつにつれ姿を見かけなくなった。
彼らの生活も落ち着いたのだろうか?
戦後20年、東京オリンピックを終え
日本は高度成長時代で浮き足たっていた頃である。
夏が来るといつもあの日のことを思い出す。
彼にも家族がいたのだろうか?
8月15日が近づいてくると彼らの姿を思い出す。