「若冲」にもう遭いましたか?
こんにちは♪ 唐突ですが、この絵を見たことがありますか??近年ますます人気が高まっているので(雑誌BRUTUSでも特集されているそうな・・)、ご存知の方も多いかもしれませんが、江戸時代の画家・伊藤若冲(1716~1800)による「動植綵絵」30幅のうち「群鶏図」です(皇居・三の丸尚蔵館蔵)。私が初めてこの絵を見たのは、昭和60年(1989年)、昭和天皇在位60年を記念して開かれた「日本国宝展」でした。日本国宝展は恐らく二度とこれだけの作品が集まるのは難しいと思われる程、日本美術の粋を集めた非常にレベルの高い展覧会でしたが、展示替を交えつつ約10幅ほどの「動植綵絵」がまとめて展示されていた若冲の作品群は、色鮮やかさ・執拗な程の綿密さ・構図の面白さ等で圧倒的な迫力を放っていました。岡本太郎ではありませんが、本当に「何だ、コレ!!」という凄い衝撃で、その時から若冲に執り付かれてしまいました(つまり若冲フリーク・・)。若冲は、京都の錦市場の青物問屋の跡取り・「旦那」だったものの、商売に向かず、弟に家督を継いでもらって40歳で隠居、84歳まで絵に専念する生涯を全うしましたが、絵に専念できる境遇にしてくれた弟に非常に感謝していたと云われ、先に亡くなった弟を弔う仏画(相国寺蔵)には、仏様の回りに家の商売道具だった「野菜」が舞っています。志井の画家故に流派にとらわれることなく「自由に描きたいものを自分の好きなように描く」恵まれた境遇から生み出された作品は、どれも魅力的ですが、特に豊かな財力に支えられた高価な画材のおかげもあり、200年以上たった現在でも色鮮やかな生命力を湛えています。水墨画も、若冲が描くと、ユニークな構図、活き活きとした線、墨の滲み等、躍動感に溢れています。鳥にしても動物にしても、他の画家なら描かない正面からの「間抜けな」表情さえも描き込み、全く飽きることがありません。若冲の絵は、見る者を驚かせ、見る楽しさを十二分に感じさせます。☆ プライス・コレクション(伊藤若冲と江戸の画家)戦後、忘れられていた若冲を見出した幸運な一人は、米国人のジョー・プライス氏です。豊かな財力に恵まれたプライス氏は、大学卒業記念に車を買うはずだった資金で、ニューヨークの画廊で若冲の絵に偶然遭遇して購入(買った当時は伊藤若冲の存在は知らず作品そのものの素晴らしさに感激して購入に至ったそうですが、現在、京都の相国寺の承天閣美術館に展示してある鹿苑寺(金閣)の大書院にかつてあった障壁画に似た墨で描いた葡萄の絵です)、現在に続くコレクションが始まります。2000年に開かれた京都国立博物館の「伊藤若冲展」でもプライス氏の収集品が招聘されましたが、残念ながら私は行けませんでした(涙)。今回のプライスコレクション「若冲と江戸絵画」展(東京国立博物館・平成館2006年7月4日(火)~8月27日(日)、以降、京都、九州、愛知へ巡回)で、東京国立博物館と共同で選んだプライス氏のコレクション101点のうち、私が見たかったのはコレ・・↓プライス・コレクション「鳥獣花木図屏風」(紙本着色、6曲1双) 落款は無いものの、若冲作品に間違いないとされており、スーラ等より遥かに早く試みられたモザイク画です。「升目描き」とも云われる描法(ちなみに一双で升目の数は約86,000個だそうな・・)で描かれた鳥や動物たちは、迫力ある色と構図で人を驚かせつつ、アンリ・ルソーを思わせる、不思議な、でも本当に楽しい絵です。他に、隙の無い徹底した美しい画風が魅力の酒井抱一(姫路の酒井家の次男)、幻想的な画風の鈴木基一など、プライス氏の素晴らしいコレクションは必見です。特に今回は、当時の光の状況を再現、ガラス越しで無く、作品を見ることが出来る展示コーナーが素晴らしいです。「日」の加減で全く印象が変わる画面の魅力を是非、味わってくださいね。奈良の春日大社・興福寺による春日若宮御祭の屏風もありますが、同行事については、「祭りの事典」を参照下さいね!! ↓☆ 三の丸尚蔵館「「花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>」今年は、プライス・コレクションの招聘といい、若冲特集という感じで、丸の内の皇居にある三の丸尚蔵館でも若冲の作品が数多く展示されています。明治時代、廃仏毀釈で困窮した京都の相国寺(若冲のパトロンでもありました)等から皇室が買い上げてあげた作品群が中心です。残念ながら第3期まで終了してしまいましたが、会期は以下の通りです(午前9時~午後4時15分、入館は午後4時まで):第4期:7月8日(土)~8月6日(日) (←今日までです・・) 第5期:8月12日(土)~9月10日(日) 尚、「動植綵絵」については、来年、相国寺の承天閣美術館でも特集展示があるようです(若冲・動植綵絵展:2007年5月13日(日)~6月3日(日))。京都にまた行かなくては・・もしまだ若冲に出遭っていないのであれば・・・若冲に遭うと・・・日本画の概念が変わると思います旭日鳳凰図 伊藤若冲 1幅 宝暦5年(1755)(三の丸尚蔵館蔵)