夏目友人帳 陸 第5話 「縛られしもの」
夏目友人帳 陸 第5話 「縛られしもの」 元祓い屋のタクマさんの話の後編です。 ☆前のお話は → 第4話 「違える瞳」☆タクマさんが登場する前期の話は→ 夏目友人帳 伍 第8話 歪みなき世界★5期全話はこちら →「夏目友人帳 伍」 (・_・) 「お前、見えるな。開けて、開けて。体がつかえて入れない。入れて、入れて。...入れろ、入れろよ、入れろよ畜生」夏目を放さない妖怪に、いつまで私の獲物に手をかけていると斑。夏目がパンチを一発。痛がる妖怪。 「およし、みっともない。諦めて去りな」 呪われろと言う妖怪に、やかましい、去れと斑。光で外の妖怪を追い払った。 夏目が、ありがとう大丈夫かと言うと、妖はお前を助けたわけではないと言った。「敷地内で人の子にケガをさせては、あのお方やお嬢様が困るであろうが。邪魔をするなと言っただろうが。さっさとお前らも出て行け」夏目は、俺はあなたを祓うために来たんじゃない。今のやつは誰だ? この家で起きてることを知っているなら話してほしい。あなたはタクマさんの式なんだろう? と言ったが妖は行ってしまった。 夏目:「ありがとう、先生」先生:「追っ払っただけだ」夏目:「外のやつは中に入れないみたいだな」先生:「いろんなところに護符が貼ってあるせいだろう。あの女、その前からこの家にいるのだろうな」 あの妖にはまだ聞きたいことがあるから捜そうと夏目。光がもれている穴があって夏目が覗くと外から別の妖怪が覗いていた。わっと驚いて夏目が飛びのくと背後に来た名取の顎に頭突きがヒット。 すみません、壁の外に何かいてと夏目。護符の貼り方がめちゃくちゃだなと名取は言った。外の別の妖怪も、入れろ~と叫ぶ。 外で瓜姫に何か見たかと聞くと、柊が家の周りに何か気配があると追っていますと答えた。家を覗くものがこのあたりにいた。捜せ。あともう一匹いるらしいと名取。夏目:「名取さんはいつ頃からこういうことを始めたんですか」名取:「祓い屋のことかい。高校2年で会合に参加したかな」 名取:「タクマさんとはそこで初めて会ったんだよ。駆け出しの頃お世話になったんだ。それまでは本家の蔵でいろいろ漁ったり...」 どうしたんだい急にと言われた夏目は、映画の名取さんを観てるのは楽しかったけど、こういうことをやっている名取さんを見てるとなんか時々ひどく心配になるんですと言った。夏目:「あ、すみません。口出しするようなことじゃないんですが...」名取:「ありがとう。なんとなくわかるよ。私も今となっては無茶な夏目が祓い屋なんか始めたら心配で心臓が爆発するよ」 名取:「夏目は普通に生きるべきだ。普通の生活を送るべきだ。見えなくなってタクマさんは月子さんと普通の生活を送ろうとしているんだ。それを邪魔するものは許せないな」 この壁を壊して災いを中に入れようとしていると名取。人間じゃない爪痕があった。名取は式たちと外を調べるから夏目は先生と月子さんのところへ戻ってやってくれと言った。 夏目:『名取さんは言ってた。タクマさんの式は三匹いたと。ひとりはあの人。そしてたぶん家の周りで暴れ回っているのが残り二匹』 夏目:『二匹は本当にタクマさんに恨みを?...』 タクマが帰ってきて玄関を開けようとした。そばにさっきの妖怪がいる。夏目は君は誰だと言うタクマを引っ張り込むと急いで玄関の戸を閉めた。 名取:「『誰が話してやるものか。半端者の祓い屋風情に』か...」笹後:「主様、無礼な妖者の言ったことなど、気になさることはありません」名取:「ハハ、違う。引っかかっているのは、そういうことじゃない」 タクマ:「君は誰だ。私の家で何をしている」 夏目:「ええと、あの...」 月子:「お父さん、その子は私のお客さん。早かったじゃない。お芝居は?」タクマ:「気が乗らないから帰ってきた。月子、いったい何をコソコソやっているんだ」 名取:「私を呼んだからですよ。お久しぶりです。タクマさん」 名取:「月子さん、元式の仕業ならタクマさんに聞いてもらったほうがいい」 おそらく家の中に一匹、外に二匹の式が徘徊しているようですと名取はタクマに話した。タクマ:「そうか...時々、家の中や出かける時に式たちの気配を感じるような気がしていたが、もはやその感覚さえ怪しいものだ」タクマ:「解放してやる力がなくなった私が早く逝くことを望むのは無理ないことだろう。それで、周一くんはどうすればいいと?」 名取:「危険なようなら祓うか封じるのが後を引かないと思いますが」タクマ:「見えなくなって一方的に放り出した私のほうが悪いのにか?」 名取:「甘く構えてご自分の業に家族を巻き込む気ですか?」 名取:「タクマさんは式に情もあるでしょうが、私はタクマさんや月子さんに何かあってから後悔するのは御免です」 夏目:「名取さんが心配するように甘さは危険です。でも近くにいるのは恨んでいるからとは限らない。外のふたりは暴れているようですが、中にいる妖とは話ができるかもしれません」タクマ:「お、君も見えるのか」 夏目:「はい。いつも名取さんに助けてもらっています」タクマ:「そうか...」部屋の外を妖が通ったことに気づいたニャンコ先生が夏目に知らせる。夏目は後を追う。 夏目:「待ってくれ。どうすればいい? どうすればタクマさんたちを守れるか知っていたら話してくれ。このままだと外のふたりを祓わなければならなくなる。名取さんやタクマさんに、そんなことさせたくないんです。力を貸してもらえませんか」いやだいやだ。お前と話していると嫌でも思い出すのだと妖は夏目に言った。 「ほんの少し前まで、こうしてあの方とも...」外で暴れているふたりが主に危害を加える気なら私がけじめをつけるつもりだったが、あれらが解放を望んでいるのならそうしてやってほしいと妖。お前ほどの力があれば、解約の儀ができるかもしれんなと言った。名取が来て妖は消えた。夏目は、やはり家にいる妖はタクマさんたちを守ろうとしていると話した。 多軌の陣があればもう一度会わせてやれるだろうかと考える夏目。見えていた人にもう一度自分の式を見せる術のようなものはないのかと名取にたずねると、前にも言ったようにそれは禁術だよ。たとえ祓い屋と式であってもねと言われた。『その手のは無縁の者も祟られかねない危険なものなんだ...本当の名を縛るとただの言葉でさえ逆らえない。握れ潰せば命を奪える非道な術もある。まあ、これも相当の力がいる幻の術で...』 先生:「無駄話はそこまでだ。日が沈むと面倒になるぞ」夏目:「ああ、そうだな」頭上で大きな音がした。瓦を割り始めたようだ。夏目:「どうしても入りたいようですね。さっきも...そもそも、なぜあのふたりは入れないんでしょう」名取:「ああそうだね。それはたぶん...」 ひどい家鳴り。ひょっとしてこれも妖怪の? という月子にタクマは、すまない、長年続けてきた祓い屋を辞めたというのにいつまでも怖い思いをさせる...と言った。月子:「ううん、私にも見えたら...跡も継げたしお父さんを守れたのに。式たちが何て言っているか伝えてあげられたのに...ごめんね、お父さん。ごめんね...」 部屋に戻ると、タクマと月子のそばに妖が立っていて、夏目と名取に、黙ってお聞きと言った。 「見えなくなったとはいえ主を守り続けようと我らは語り合っていた。あのふたりが入れないのはお嬢様が護符を貼ったからさ。あいつらが外にいた時だった。目が粗く子豚や小娘の妖者なら通れるが我らには網となって隔たっている。あいつらはあまり賢くない。今は主に結界を張られ締め出されたと思っている。帰る場所を主が奪ったと...」 名取:「それで仕返しに災厄を? 護符を剥がせば災厄は収まるのか」夏目:「名取さん」 妖:「もう遅い。あいつらの心はこじれた。入ってくれば何をするかわからない。しかし、せめて解放されれば少しは...どうかこのことは、お嬢様には知られぬよう頼みます」 タクマ:「周一くん、誰か今いるのか?」 夏目:「います。おふたりを心配して、月子さんがタクマさんを守ろうと頑張っているように、その妖もこの家を守ろうとしています。タクマさん、外の妖にも事情があるみたいなんです。解約の儀のやり方を知りませんか? 俺ならやれるらしいんです」 タクマ:「これは契約の時に使った木札だ。式の名前が書いてある」 「妖の名を契約者の血で塗りつぶした後、大きな陣を描く。その中に妖が入って来たら呪を唱えながら木札を割る」 タクマ:「簡単なようだが、妖力が弱ければ木札は割れないし、割らずにどちらかが陣を出ると、命に係わることもあると言われている」 先生:「その手のチャチな契約などお前の力なら楽勝だな」 先生:「ただし、木札を割る前に妖者が陣から出ようとしたら、お前がぐずろうが喰うからな。まあるく収めたいならしくじらないことだ」夏目:「ああ、先生」 名取:「夏目、うちの式たちに陣の回りをかためさせる。いいね、一回でも危ないと思ったら、私が木札を割る役をもらうよ」夏目:「はい」 夏目:「おい、解約の儀を行わせてくれないか。タクマさんがそれを望んでいる」危ないから家の中にと言ったがタクマが外に出てきた。タクマだ~と近寄る妖。 タクマ:「せめて立ち会わせてください。外に出た私を襲う気ならとっくにやれたはず」ジンベ:「いいか、よく聞け。近々この家に恐ろしい災いが降りかかるぞ。それはそれは恐ろしき災いだ。呪詛を完成すればこんな家ひとたまりもないのだ。あの日、私が外に出たのをいいことに家を封じおって。だがそれも今日まで。恐ろしい恐ろしい災いが来るぞ。それはそれは恐ろしい災いだ。お前には絶対に絶対に祓えない」 ジンベ:「そんな恐ろしい災いを見事打ち祓ってみせるから、私の力を見せるから、そしたら、もう一度お家に入れて。きっと、きっと、また役に立ってみせるから。タクマ、タクマ、役に立てたらまたそばに来てもいいでしょ」 夏目:「ジンベ、陣の中へ。あなたたちが自由になることをタクマさんが望んでいる。あなたたちへの最後の願いです。どうか」ジンベ:「タクマの望み...」 名取:「紅紐だね。タクマさんは君らを捨てたんじゃない。たとえもう一度この家に入れても、もう君たちが見えないし声を聞くこともないんだ。陣へ。自由になってくれ」 ジンベと紅紐が陣の中に入る。 夏目が唱える。 木札が割れた。 「ジンベ、紅紐、銀露、いるか?」ジンベと紅紐から、ほんの少しだけ記憶が見えた。「今日はもう休んでくれ。明日は次の仕事の話をするぞ」同じ言葉に同じ時。「少し大変そうだが、君たちとなら何とかなるだろう。無事に終わったら久しぶりに、みんなで映画でも観に行くか」たぶん、それが最後だったのだ。タクマさんが三人を見たのは。 目が覚めて飛び起きる夏目。ニャンコ先生は飛ばされる。もう少し横になっていなさいとタクマ。 夏目:「妖は? 解約の儀は?」タクマ:「うまくいったよ。ふたりとも、もう話もできないなら寂しいからと去って行ったらしい。ありがとう」 名取:「いい子だけど会うと無茶ばかりするんです。どうすればいいんですかね」タクマ:「さあね。ハハ、君も少し変わったね」 名取:「そうですか、それはどうかな...」 こうして祓い屋と元式たちの事件は収まった。 タクマの家を後にする夏目たちに銀露が頭を下げた。 先生:「銀露とかいうあいつは、タクマの命が終わるまでこの家に残るようだな。物好きなもんだ」夏目:「そうか...」 「終い時か...」メガネを外すタクマ。「ジンベ、紅紐、銀露」 「君たちとの時間は楽しかったよ」 夏目も困ったらいつでも呼んでくれよと名取。持ちつ持たれつですね、名取さんこそですよと夏目。きっとですよと手を振って別れた。 名取:「瓜姫、夏目が時々、何かを大事そうに持っているだろ。アレを調べろ。銀露の口ぶりだと祓い屋風情に知られるとまずいほど危険なもののようだな」 名取:「ひょっとしたら、優しくて無茶な夏目が持っていてはいけないものかもしれないなあ」☆次回 「西村と北本」【感想】いいお話だったけど悲しいね。タクマさんの式たちはみんな彼が大好きなんだね。ジンベの役に立ってみせるから、またそばに来てもいいでしょって言葉が健気で辛かった。祓い屋って大変な仕事だと思うけど突然見えなくなったりもするんだね。無事、解約の儀ができてよかった。夏目がいなかったら名取さん祓ってしまったかもだよね。で、いいお話と思ったらラストの名取さん。やっぱり友人帳のこと聞いていたし、かなり気にしているんだね。目つきが悪くなってたような。夏目を傷つけるようなことはしないと思うんだけど、ちょっと心配。ニャンコ先生はいい仕事していたけど、今週もまた食ってたな。お話に関係ないが、月子さんにちゃっかり抱かれて食べているのはマドレーヌかい?