今日読んだ本
大峡谷のパピヨン
あり得ねえ!と、心の中で絶叫した。
眼の前にものすごい勢いで岩肌が迫る。
ぶつかる!と咄嗟に固く眼を閉じたが、
機は必要最小限の動きで軽やかに身をひねり、
女は再び舌打ちしていた。
「今のもそうだ。
岩の表面を撫でるように飛べばもっと詰められるのに」
岩の表面を『何』で『どう』撫でるのか。
それを聞く勇気は今のガストーネにはなかった。
「事情があって、どうしても峡谷競走で勝たないといけないんだ。
ただし、賞金は全部そっちに渡す」
「…金が欲しいわけじゃないのか?」
「ああ。わたしには必要ない」
「じゃあ、何でだ?」「生き別れになった相棒を捜している」
『生き別れの相棒』(注:生物ではない)の消息を求め、
ジャスミンは命知らずどもが集う峡谷競走に出場するが…。