今日読んだ本
夜の展覧会
リィはその絵の前でぽかんと口を開けていた。
横にはシェラもいたが、同じく困惑の表情である。
絵の題は『暁の天使』
「…ルーファだよな?」
「わたしにもそう見えるんですけど…この制作年代を見てください」
ありとあらゆる常識を無視して存在する人だが、
三百年も前の絵にその顔が描かれているとなると、
いくら何でも理解の範疇を超えてしまう。
三百年前に死んだ画家が残した遺書
“まだ見ぬ黄金と翠緑玉の君へ。余は『暁の天使』を君に贈る”
絵を見上げて、
誰が見ても天使と言うに違いない少年は大真面目に呟いた。
「このまま持って帰ったらだめかな?」
そして、この連邦の至宝は消失する。
誰もが、緑に輝く瞳を脳裏に浮かべ、「もしや」と考え、そして―。