彼女の日記
先日、静岡県伊豆の国市で高校1年が女子生徒の母親にタリウムを摂取させ、母親が意識不明の重体になり、殺人未遂で女子生徒が逮捕された事件で、僕は独自のルートで、彼女がつけていた日記を入手しました。今日はその日記の内容を書きたいと思います。 瓶の中の少女 6月27日日記を書き始めようと思います。学校の人はこの事を知らないので、嫌な事とかも全て書くつもりです。6月28日今日は暑かったです。昨日も真夏のようでした。昨日は水泳の授業がありました。憂鬱な体育の授業です。7月2日久しぶりに買い物に行ってきました。買ったものは、以下の通りです。瓶500ml・・・5瓶、瓶750ml・・・2瓶、8/4スプレー・・・1缶、チャッカマンミニ・・・1個7月3日今日は本の紹介します。グレアム・ヤング毒殺日記 尊敬する人の伝記、彼は14歳で人を殺した。酒石酸アンチモンカリウムで、毒殺した。7月7日晴れのち雨そして快晴、この間買った酔い止め薬の通常使用量の8倍の量を飲み干しました。なんか浮かんでいる気がします。ふわふわして地に足が着いてない感じがします。7月11日頭が痛いです。エフェ錠の副作用でしょうか?周りで女子の甲高い声が響いているのが聞こえます、其の音が耳に入る度に、後頭部に鈍い痛みが走ります。7月14日道を歩いていた野良犬を蹴ったら、キャンキャン喚きながら、地べたを這いずり回った。あはは、まるで本当の犬みたい。7月16日今日は図書館に行って本を借りてきました。「死体を語ろう」や「日本列島毒殺事件簿」、「薬物乱用の科学」、「有機科学入門」等を借りました。7月18日お昼頃、買い物をしに歩いていたら道端に血まみれの猫の死体が落ちていました。頭が潰れていて、中から脳髄がはみ出していました。7月19日ネット上の性別は、戸籍上のものとは違うものが使われることが多いのでしょうか?だとしたら、僕の罪も少しは許されると思います。7月23日そんな事は在りえないけれども、もし、一度だけ生まれ変われるとしたら、僕は植物になりたい。大きな喜びは無いけれど、代わりに深い悲しみも無い。7月26日暗闇の大木に揺ら揺らと紅い光を馳せて蝉が光る茶色く干乾びた其の体に命の残り火を燻らせニイと啼く木々の沈黙の中其の声は雨の様に僕の下へと降り注ぐ7月28日僕の中に居る彼女の存在を感じなくなりました。消えてしまったのでしょうか。とても寂しいです。7月30日唐突だけど、僕は酒鬼薔薇少年が好きではありません。自作の詩だという「懲役13年」は、神曲等の有名な詩を切り貼りしただけの代物ですし。8月5日テトラヒドロゾリン―目の充血、鼻づまり改善薬『ABC点鼻スプレー』『ナーベル点鼻・点眼』『リン酸コデイン―鎮咳剤』『コデイン』『リンコデ』『リン酸コデイン』8月6日西友は薬品の品数が少なくて、思った様には行きませんでしたが、テトラヒドロゾリンを5mg/10mlで含んでいる物として、バイシン1箱を手に入れました。早速飲んでみました。同日今まで様々な生物を僕は殺戮してきた。彼等で遊ぶのは楽しかったが、同時にとても疲れた。何故なら、残った肉塊の処理だけでも数時間は優に要したから。同日僕の周りの、僕以外の全ての人にオキシトシンを嗅がせたい。8月9日もしも人間が悪魔であるなら・・・種族そのものが邪悪な存在であるなら・・・その対極にあるべき『善』とは何だ?8月10日赤いマントで興奮するのは、牛じゃなくて観衆。牛は色が見えない。8月14日Benzene Hexachloride―ベンゼンヘキサクロライド―を昨日合成しました。別名ヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)とも呼ばれる、有機塩素系の殺虫剤の一つ。8月19日薬局から電話がありました。問屋が“酢酸タリウム”と“酢酸カリウム”を間違えたらしいです。直ぐに取り替えるそうですが、待ち侘びています。8月24日酢酸タリウムが届きました。薬局のおじさんは「医薬用外劇物」の表示に気付かず、必要な書類を通す事無く僕に其れを渡してきました。8月25日変な夢を見ました。僕が彼女を食べる夢です。僕は彼女を手、足、胴体、頭の順に食べました。細い腕は魚みたいに痙攣していて、引きちぎれても未だ動きました。同日昨日から母の具合が悪いです。全身に発疹が起こり、特に顔面に症状が強く出ています。今日は皮膚科へ行きましたが、医者もただ首を傾げるばかりで原因は分からないそうです。8月26日お腹が痛いです。原因は解っています。タリウムです。昨日、それの水溶液を誤って指に付けてしまったのです。直ぐに手を洗ったのですが、指先は白く濁ったままです。8月27日寝ても起きても気持ち悪いし、指先とか脚とかが痺れてきたので、解毒剤を作りました。タリウム中毒の治療はプルシアンブルーと塩化カリウムの経口投与によって行なわれます。8月31日暗い部屋で、蝋燭の炎を見る。ゆらゆら、ゆらゆら、おもしろいよ・・・9月4日生き物を殺すという事、何かにナイフを突き立てる瞬間、柔らかな肉を引き裂く感触生暖かい血の温度。漏れる吐息。すべてが僕を慰めてくれる。9月12日今日も母の調子は悪いです。2,3日前から脚の不調を訴えていたけど、遂に殆ど動けなくなってしまいました。二階にある僕の部屋まで来る事も出来なくなりました。9月13日今日は体育の補修で500mを泳ぎました。カフェ錠を飲んでいたので、比較的楽しく泳ぐ事ができました。同日アトロピンの抽出朝鮮朝顔の根もしくは葉を熱湯で湯掻き、炉液をケン化させる。アルカロイドが沈殿するため此れを濾過し、希硫酸を加え硫酸アトロピンとする。9月19日現実の方が大変になってきてしまったので、暫くブログの更新を停止します。すいません。9月26日明日、母は入院します。未だ原因は不明のままです。残念な事に母は余り良い保険に加入していないため、生活は少しばかり苦しくなるでしょう。9月27日隠れる事は喜びでありながら、見つけられない事は苦痛である。見つけられることは危険である。しかし其の逆に、自分が存在していることを確認するためには、誰かに見つけられるしかない。9月28日母はよく泣くようになった。僕に“毒を造って欲しい”“誤って飲んだ事にして貰いたい”とぼやく。自殺衝動が出始めたようだ。10月2日母は入院した。父が呼んだ救急車で連れて行かれた。入院先は近くの病院、布製の担架で運ばれて行った。父も同伴した。少し悲しそうな顔をしていた。同日銀色のベルを揺らせば涼しげな音が鳴るだろう銀色の刃物の先で命が震えている此れはどんな音色を奏でているのか。母の顔を暖かいタオルで拭いてあげた。10月3日今日は病院へ行ってきた。祖父母と兄と僕とで母の見舞いに訪れたのだ。先客として叔母さんが居た。まあ、呼ばれて行ったのだから当たり前ではある。10月某日今日は調子が良い。何でも新しい薬を貰ってきたという。病名も分かった、ストレスによる多発性神経炎だそうだ。検査で何も出なかったからそう判断したらしい。10月某日星が空から落ちる。兔たちはオーブンの中で草むらの記憶すらも硬化させる。500mgに増やしたステロイドの影響だろうか、顔の腫れが目立っていた。10月某日人は輪になって踊る。丘の上で死体を数え、微笑みながら飲み交わす。撃ち殺された男の匂い、引き裂かれた女の匂い。10月某日部屋が変わっていた。4階のB棟、3人部屋だ。10月某日血圧は上が115、下が85であった。殆ど戻ってきたところだ。しかし病状は悪化している。日直の先生も異常を察し、集中治療室へ連れて行った。10月某日特に変化なし、今日も昨日と同じように写真を撮って帰った。長男に目つきが怖いと言われた。寒気がするって、僕は“毎日この顔を洗面台の前で見ているんだぜ。10月16日叔母が言うところによると、母は幻覚を見始めたらしい。居もしない虫や、ドアの傍の白い陰に悩まされていると言う。同日今日の朝、先生に筆記用具を借りた。其の時泣きながら母の話しをして、同情を得た。人って案外簡単に騙されるものなんだと思った。同日蒼ざめた馬の通る道に、規則は存在しない。暗闇を進む足跡は草木を枯らし、死を招く。其処に生命は宿らない。在るのは寂しい同じ形。彼女の日記は、ここで終わっている。そして、この4日後に、自らも毒薬を飲んで自殺未遂をした。