カテゴリ:環境問題
PFAS(ピーファス)規制とは炭素とフッ素の原子をもつ化学物質であるPFAS(ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物)の輸入や製造・使用を規制するものです。PFASは人体への有害性や分解されにくさ・自然界への蓄積性・長距離移動性などの特性があるため、環境への排出を継続した場合の将来への影響を未然に防止するために規制されています。 米国では発がん性や免疫力の低下など人体に及ぼす悪影響の可能性が指摘されておりPFASに対する国民の意識が強くなってきています。また日常製品に含まれるPFASを巡って大手企業が集団訴訟を受けるケースも発生してきています。国際的にもPFASを規制する動きが強まっていることから米国のEPA(環境保護庁)も規制強化に向けて動き出しています。化学品安全室・公害防止室による国家的なPFAS検査戦略や水道局による飲料水規制の確率があります。その他、国土危機管理局・航空放射線局などEPA内の各部署における具体的な施策が検討・実行されており、規制に応じて今後も取り組みが進んでいきます。 米国ではPFAS戦略的ロードマップに従って規制を進めており、2024年4月に飲料水の基準値を最終決定しました。米国連邦政府がPFASについて法的拘束力のある全米基準を定めるのは初めてのことで、PFOS・PFOAは4ng/L、PFHxS・PFNA・HFPO-DA(GenX Chemicals)は10ng/Lという、これまでの基準値より大幅な厳格改定をしました。また、全米の公共水道システムに3年以内に飲料水中のPFAS量測定と情報公開を求め、基準を超えた場合5年以内に削減対応を求めています。全米公共水道システムは老朽化しており、今回の規制対応を含めると2030年までに水道インフラ改善が必要となるので相応額の公共投資が必要となります。 日本においては化審法(化学物質の審査および製造等の規制に関する法律)に基づいてPFAS規制を推進しており、2010年にPFOS、2021年にPFOAの製造・輸入が原則禁止になりました。2020年には厚労省が飲料水中のPFOSとPFOAの合算値を50ng/L以下とする暫定目標値を定めていますが、米国の基準値(4ng/L)より12倍以上、規制は緩く設定されています。日本との関係性が深い米国の動向は今後、日本のPFAS規制にも大きな影響を与える可能性が高いため、企業は米国だけでなく世界各国の最新動向を確認しながら国内におけるPFAS規制の情報を確認していくことが必要となります。 米国コロラド州のジャレッド・ポリス知事はPFASの規制に関する法律に署名し同法は成立しました。この規制により同州では2026年から「永遠の化学物質」と呼ばれるPFASが含まれる日用品の販売が禁止されます。2025年1月以降PFASを使用した特定のアウトドア向けアパレル製品(透湿防水加工した製品)についてPFASを含む旨を開示する表示を付けない場合は販売または流通を禁止となります。2026年1月以降はPFASを使用したクリーニング製品(医療用床メンテナンス製品を除く)、デンタルフロス・生理用品・スキーワックス・調理器具の販売または流通を禁止、また州内のいかなる土地にもPFASを使用した人工芝を設置することを禁止します。2028年1月以降にはPFASを使用した医療用床メンテナンス製品・繊維製品・透湿防水加工したアウトドアアパレル製品・主に商業使用を目的とした食品器具の販売または流通を禁止します。 日本の水道水は安全とされてきましたが、米国のPFAS規制を見るとそうとは言えなくなってきました。PFASのうちPFOSとPFOAは毒性が高いとされ、自然界に流出すると土壌にしみこむなどして広範囲に環境を汚染します。環境省が国内の河川や地下水への含有量を調べた結果、2022年度は東京・大阪・沖縄など16都府県の111地点で国の暫定目標値を超えていることが判明しました。沖縄県では過去にも米軍嘉手納基地周辺の河川や浄水場で検出されており、健康被害への不安が依然根強いままです。昨年1月に米軍横田基地でPFASを含む汚染水の漏出事故は、日米政府で情報を隠蔽していたことがわかりました。日本も米国のPFAS規制に合わせて規制の見直しや国民への情報公開、公共水道システムを含めてインフラ改善が必要な時期に来ています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年07月15日 06時13分15秒
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