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村松克哉

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2024年09月
2024年07月20日
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カテゴリ:経済



 ビバレッジ曲線(UV曲線)とは、雇用失業率(U)と欠員率(V)の関係を示す右下がりの曲線で失業と欠員(Unemployment・Vacancies)の頭文字をとっています。失業者(求職者)が多ければ多いほど企業は欠員を埋めやすくなることを示しており、労働市場の非効率性を理論的に含意しています。
 ビバレッジ曲線(UV曲線)はUV分析において失業率を需要不足失業率と構造的・摩擦的失業率に分解することもできます。摩擦的失業とは仕事と労働者が完全に一致しないために生じる一時的な失業で労働者が新しい仕事を探す時や雇用者が適切な労働者を探す時に発生します。
 リーマンショック後の2009年8月、我が国の有効求人倍率は過去最低の0.42倍を記録しましたが、その後2012年11月から始まったアベノミクスにより回復し、2014年頃から1倍を超えました。その後、いったん低下はしたものの1倍を超えて現在は1.3倍の高水準を続けています。
 一方、完全失業率は2009年7月に過去最悪の5.6%を記録し、2019年12月には2.2%にまで回復したものの「人手不足」と称される割には頭打ち感があり、現在は2.6%の水準にとどまっています。有効求人倍率が1を超えているにも関わらず、失業率がそれほどの水準にまでしか低下しないのは景気拡張により需要不足による失業は減少しても労働市場の非効率性が原因の失業は解消されず、ある一定水準存在しているからと言われています。
 失業を需要不足によるものと市場の非効率性によるものに分解するために有用なツールがビバレッジ曲線(UV曲線)です。歴史的には1960年代後半の英国において活用が始まりました。ケインズ的な総需要管理政策の拠り所であったフィリップス曲線(失業率とインフレ率の関係を示す右下がりの曲線)が崩壊するにおよび、その原因を解明するため、労働市場の超過需要の大きさを測るより適切な指標として欠員を把握する必要から発展したものとされています。
 マクロの労働供給量をS・労働需要量をD・失業数をU・欠員数(未充足求人数)をV・雇用数をEとすると、S=E+U, D=E+Vで表されますが、労働市場が効率的に機能し求人と求職が結びつくことに何の障害もないのであれば労働市場が超過供給で人手が余っているときにはE=Dとなって欠員は生じず、労働市場が超過需要で人手が不足しているときにはE=Sとなって失業は生じないはずです。したがって、このときには失業と欠員はどちらか片方にしか存在しません。
 しかし、求人と求職の間に情報が不完全であったり物理的に離れていたり職種や職能にミスマッチが生じたりすると求人と求職が結びつくのに時間がかかり、労働市場が超過供給であっても欠員が残ったり、超過需要であっても失業が残ったりします。こうして現実には失業と欠員は常に併存し、実証的にも右下がりで原点に向かって凸の形状をもつ曲線が両者の関係として観測されます。
 米国の失業率は2020年3月に4.4%だったのが同年4月に14.7%と急上昇し、リーマンショック時を超える高水準となりましたが、その後、急速に低下し、2021年12月以降は4%を切っていました。2024年6月には前月より0.1ポイント悪化の4.1%となり、1年前よりも0.5ポイント悪化しました。これは2021年11月以来の高水準となっています。一方、求人件数は2022年3月に1218万2000件でピークを付けましたが、2021年以来の最低水準となった5月には失業者1人当たりの求人件数が1.22件でした。また、労働者がより良い職を求めて自発的に離職する動きを示す自発的な離職率は2.2%と2020年9月以来、およそ3年ぶりの低水準でした。米国の労働市場は変曲点を迎え、解雇が加速するリスクも高まってきているようなのでFRBの金融政策、利下げをいつ行うのかに注目です。





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最終更新日  2024年07月20日 06時41分57秒
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