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村松克哉

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2024年09月
2024年07月31日
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カテゴリ:経営



 1990年代のバブル崩壊以来、日本人はモノの所有ではなくモノの利用価値を重視するようになりました。消費増税を繰り返し賃金も低いままに置かれ負担にあえいできた家計をやりくりする人々はモノ自体に価値を認めるということはできず、モノの機能性を評価・判断するようになりました。例えばかつては自動車所有がステータス・シンボルでしたが、今は公共交通機関の方が便利になり、必要なときだけレンタカーを利用する方が「コスパが良い」と考える人が主流です。幅広いジャンルでサブスクリプション・サービスが普及し音楽や映画・衣類など様々なモノを所有せずに消費することが可能となり主流となっています。
 モノ消費からコト消費へと移行した消費行動のトレンドはさらにトキ消費へと移行しています。トキ消費とは、その場でしかできない体験を主体的に経験することにお金を出す消費形態ですが、フェスやファンミーティング、演劇、スポーツイベントなどへの参加が代表例です。SNSによるコト消費の拡散が一般的になり人々は体験に既視感を抱き、その多さに疲れ始めました。次第にネットで疑似体験できるコトより、その場限りでしか経験できないトキへの需要が高まっていったのです。Z世代を中心に若者はその方が「タイパが良い」と費やした時間と得られた満足度の時間対効果を重視するようになりました。
 経済成長のけん引役もモノからコト・トキ消費に変わっていくのがトレンドです。不確実・不透明性が増す政治経済の中で消費の価値観は変わってきています。ネットショッピングが普及したことにより実店舗でモノが売れにくくなったことも移行トレンドと関連しています。危機感を抱いた実店舗が「店舗ならではの体験」で顧客を惹きつけるコト消費的集客活動を始めました。例えば新商品に関するイベントやカウンセリング販売などがコト消費的集客活動に該当します。ネットでなんでも買うことができるからこそ、単なる商品の購入ではなく「販売員の相談するコト」「店舗でしか味わえないコト」が実店舗に行く動機になりつつあります。
 インバウンド消費も2019年までは中国人や台湾人による爆買い(モノ消費)が主流でしたが、コロナ禍から明けて昨年からは欧米客が増加し、本来あるべき日本文化の体験がより重視されるようになっています。着物・浴衣の着付けやゴーカート・花火などの体験も人気です。欧米客は遠くから来るため日本に長く滞在する傾向にあり、地方を含めて複数の地域を巡り、様々なコト消費を楽しみます。観光に力を入れている日本にとってインバウンドの消費は日本経済成長のドライバーです。訪日旅行者数で上位にある中国や韓国は日本文化への関心は低く訪日消費では化粧品・医薬品やお菓子中心で金額は振るいませんでしたが、欧米客の増加により訪日外国人の価値観が日本文化の体験などのコト消費へ移行していることが国内のビジネスモデルおよび消費金額上昇に影響を与えています。先般、政府が国立公園に高級リゾートホテルを誘致する方針を発表しましたが、欧米客が快適に滞在していただける環境整備はインバウンド消費を増やすためには重要な役割を果たします。
 音楽はCDを販売するモノ消費のビジネスモデルからコンサート中心のコト消費のビジネスモデルに転換しました。モノ消費を前提とせず、コト消費自体を売るビジネスモデルを構築するのも成長戦略と言えます。化粧品販売からエステサロンへ、寿司屋やインバウンド向けの寿司教室といったようにモノ消費型からコト消費型へと事業構造を転換する選択肢は有効でしょう。実店舗を前提としたコト消費的集客活動は追加コストがかかり、費用対効果が問題となってきます。イベントその他の販促活動で十分な成果が得られなければ経費やスペースを浪費するだけに終わるリスクがあります。
 トキ消費の特徴は非再現性・参加性・貢献性です。体験型ビジネスモデルにこれらの3要素をうまく掛け合わせられればよりユーザビリティの高いサービスを作れる可能性があります。Z世代を中心にトキ消費以外にイミ消費や推し活といった若者の消費行動も顕著にみられます。イミ消費とはモノやサービスの購入が地域貢献・社会貢献というイミをもつ消費行動です。例えば売り上げの一部が被災地に寄付される、環境に配慮した素材で作られているといった商材・サービスの消費が挙げられます。SDGsの広まりもあってイミ消費も消費のスタンダードになりつつあります。また若者は他の世代に比べて有名人やキャラクターを応援する推し活にお金をかける傾向があることが消費者庁の調査で分かっています。推し活は非再現性・参加性・貢献性があるトキ消費そのもので、キャラクターとタイアップしたプロモーションが若者世代の販促には有効です。す。
 モノ消費からコト消費・トキ消費へ転換しているトレンドは日本企業の成長戦略に影響を及ぼします。今後の成長ドライバーとして、かけがえのない体験(コト消費・トキ消費)を売るビジネスモデルを検討し、停滞した日本経済を復活させるカギはビジネスモデルの転換にあることを日本企業は真剣に考えるべきです。





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最終更新日  2024年07月31日 07時54分12秒
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