私の最も大切な言葉『Cool brain, Hot Heart.』
竹中平蔵が大臣になって間もない時期にNEWS23の特集でフリーターや女子大生、サラリーマンなどいろんな人に会って「市井の人の声を聞く」というようなことをやっていました。「どいつもこいつも"もっと弱い人のことを考えてほしい"みたいなありきたりなコトしか言わない」と冷ややかな目で見ていたらこの企画のメインのような扱いで竹中の高校?大学?時代の恩師が出てきて、その言葉に竹中さんが涙を流していたのが印象的でした。「Cool brain, Hot Heart. その言葉をまだ覚えているか?」たくさんの人の人生を左右する経済に関わる人間として絶対に忘れてはならない言葉。一時の感情に流されずどんなに非情であっても最善の判断を冷静に、時に冷徹に判断する頭脳。そして、その一方で他人の不幸を悲しみ、他人の幸福を心から願う熱い心。この背反する2つを持ち合わせる者でなければ経済を担うことはできない。当たり前、かもしれないですが、あの時、人目をはばからず涙を流して泣いていた竹中大臣がとても好きになりました。竹中平蔵と言えば「聖域なき構造改革」をかかげる小泉内閣の経済政策の司令塔として日本経済の再生に尽力した人。竹中プランとも言われるバブル以降の不良債権処理を急がせた彼の「ハード・ランディング路線」は10年以上の長きにわたって日本経済の重しになっていた不発弾を取り除き、それによって企業業績は上向きはじめました。しかし同時に、それまで曖昧だった損失が確定することによって何とかかろうじて生き残ってきた企業による未曾有の大倒産・大リストラが猛威をふるい結果的に多くの失業者と貧者を生み出したことも事実。いわば良くも悪くも小泉改革を象徴する人物です。私はこのTVを見ていなかったら竹中さんや小泉さんのことを今ほど好きではなかったかもしれません。私はすべてにおいて「合理性」「論理性」「正当性」が優先されるべき、と考えます。それによってどのような犠牲が発生しようとも最大多数の幸福が実現するためであればそれは止むを得ないと考えます。「合理性」を優先させれば時に人は冷徹にならざるえません。この凄惨な結果を引き起こす不良債権処理をためらい近視眼的な景気浮揚策しかうってこなかった歴代内閣も含め、これができない人間はただ単に「弱い」だけ「甘い」だけとして私は評価できません。しかし世の中には冷徹な判断をただ「だって、仕方ないでしょ。」の一言で片付ける人間がいます。私はこのような人間がとてもキライです。確かにそうだ、そうするしかないのは自明、私があなたの立場だったらたぶんそうするだろうと思う。でも、もう少し、こう、なにかあるだろう・・・。私はそのような人をを見るといつもこのような、まったく論理的でない「反感」をもっていました。今考えるとこの人たちには「熱い気持ち」が感じられなかったのだと思います。人は役者でもない限りよほどでないと涙は流せません。だから誰かが私のために泣いてくれたり、私が誰かのために泣くことができたりしたとき、私はとても嬉しく思います。あの時、「Cool brain, Hot Heart」の言葉を聞いて、涙を流していた竹中大臣は決して「冷徹な人」ではなく熱い気持ちをもった優しい人だとそのとき思いました。その「優しい人」があのような冷徹な手腕を振るう。彼にとって犠牲になった人たちは決して他人ではなくその人たちを他のどの政治家よりも大切に思っていたと私は信じています。だからこそ、その大切な人たちの生活を奪う彼の心中はいかばかりだったか。「弱い人のことをもっと考えろ」という口ばかりの優しさで彼を非難する人間のいかに底が浅いことか。そして日本全国から轟々たる非難をあびる竹中大臣に連日電話で「絶対に譲るな。信じた通りにやれ。」と励まし続けた小泉総理とその心に人知れず涙したという竹中大臣。いかにこの2人の「熱い」ことか。 私がたとえ犠牲にされる立場であったとしても相手が誰よりもそのことを苦しんでくれているなら「そこまで私のことを考えてくれるあなたのためなら喜んで犠牲になるよ。」と笑顔で言えるでしょう。しかしその相手が「だって、仕方ないでしょ。」の一言で済ませる人だったら私は最後まで抵抗し、最後まで「あんたは最低だ」と非難し続けるでしょう。たとえ相手の答えが正解であっても。「冷徹な判断」は「熱い気持ち」の裏打ちがあってこそ許される。振る舞いは非情であってもその下にある気持ちは優しい。そのことが犠牲にされる側にとっていかに大切であるかを私はとある女性に教えてもらいました。私はまだまだ未熟で非情な振る舞いはできても、結局は甘いところはまだかわっていません。でも、いつか私も彼女のように気高い振る舞いができるようになりたいと思っています。だから私にとっても「Cool brain, Hot Heart.」は最も大切な言葉なのです。