決断の心
ほんの少し前・・・・そう、ほんの少し前にココに日記として書いた会社の女の子。私の班の女の子のこと。心に病があって・・・・仕事中に過呼吸になって・・・・休職。その後復職できて、仕事も覚え笑顔も戻ってきた・・・・うん、そうだったのに・・・この前の深夜の勤務の昼休みに、その発作が再発したのです・・・以前と同じように。介抱しにいくと、やはり辛そうです。そのとき脳裏に・・・・・このままじゃいけないって思い浮かびました。・・・彼女、もう今度、会社で病状が出たらこの会社を去らなくてはいけません。そういう約束になっていたのです。昼休みといえば、他部署の社員も沢山います。ですから出来るだけ目立たないように・・・・って思ったのですが・・・やはりそうも行かず・・・・大勢の社員の目に触れることとなりました。苦しそうに過呼吸している姿・・・そしてその後の不安定な精神状態で泣きじゃくる姿・・・・・1日だけならどうにかごまかせる、うん1日だけなら上司にも言い訳が出来るんだ・・・・自分にそう言い聞かせてその次の日の夜勤に臨みました。ところが・・・やはり丁度お昼休みになると・・・・・同じ。他部署の監督者も、彼女を介抱している私のところにやってきて‘大丈夫なのか???’って気を遣ってくれます。この日も症状が2時間くらい続きました。もう他部署にも知れ渡り・・・・隠すこともできず・・・・そうして3日目にも同じように・・・・報告の義務。管理職として、わたしにある義務。言わなくていいのなら、隠してやりたい・・・。でも・・・他部署から、上層部へ報告されるのは目に見えています。ですから・・・夜勤から、昼間の勤務に変わってから直属の上司へ報告しました。‘発作は起きたけど、すぐによくなりました・・・仕事には問題ありません。’って。まだ数日、様子みてから上層部へ連絡してくださいっていう意味を込めて。でも、上司は会社の上層部へ、その旨の報告をしたようなのです。そこにもやはり、報告の義務を遵守する・・・という気持ちがあったのだと思います。そしてそのときにはすでに、上層部にはなんとなく耳に入っていたらしく・・・・・。それから私は上層部と総務に呼ばれ意見を聞かれそこで彼女がどれだけ有能か、まだ再生の余地があるか、もし彼女が辞めた場合、会社にとってどれだけの損害になるかを説明し今後同様になった場合、私が対応するということを伝えました・・・。でも、‘君は班を管理する人間だ。介抱することが仕事じゃない。ほかにする仕事があるんじゃないのか???’そういわれたときに、自分の立場が理解できました。私は・・・管理者だったのです。班員全員のことを考えなくちゃいけない。一人だけの面倒を見るのでは・・・ないのです。甘かったのか・・・・。病を持った社員を働かせることはもしかしたら機械に体を負傷させてしまうかもしれない・・・そして病状が出たときには私だけじゃなく、介抱する社員が必要になる・・・介抱している社員は作業に従事できない時間が出来てしまう・・・・生産は、抜けた社員の分だけ遅れてしまう。それは工程の監督者としては許してはいけないことなのです。そうなんだな・・・・。彼女が入社してきたときには私が面倒みていてすごく明るい面白い娘だったのに・・・しばらくして私の班に戻ってきたときにはすでに病んでいて・・・それでも症状がなくなるようにと、自分の娘を育てるように叱って、笑って、励まして・・・・でもだからこそ、決断しなければいけなかったのかもしれません。最後は上層部と総務の人事に任せました。昨日、彼女の自宅へ人事担当者が行き、お父さん、お母さんと話した結果彼女は退社することになったとのこと。まだ正式に公表されては・・・・ないんですけどね。彼女は話がでた瞬間にその場を離れて自分の部屋へこもってしまったそうです。仕事、したがってましたもん。二つの気持ちが入り混じって、私は複雑な心境で落ち込んでいるんです。彼女は、何を考えているんだろう。きっと辞めさせることになって会社に恨みを持つかもしれません。でも会社としての真意を知ることが出来る年齢になったときにそれは納得してくれるはずだと信じています。退社させることを決定した上層部の気持ちを私は聞いています。‘今のまま仕事をこの会社で続けていても、いつ再発するのかという不安が常に彼女を苦しめるだろう。そしてもし、作業中に症状がでて機械で負傷すればそれは会社の責任以前に、ご両親やそして女性である本人を一生苦しめることになる。そんなことは望まれるはずはない。今、彼女がこの会社を辞める勇気を持って、先の長い人生で彼女に合った仕事と出会ってくれることを願っている・・・’この言葉を取り乱した今の彼女に理解しろというのは酷なことでしょうか。まだまだ19歳。子供です。症状が出たときに介抱してくれた同僚に、感謝する術もしりません。でもこの言葉に込められた愛情を感じられない彼女だからこそ今はこの会社の仕事から解放されなければならないのだと思うのです。・・・・それが上司としての私の気持ち。でも親代わりの気持ちとしてはもうすこし仕事で慣らしていけば、完全に症状が改善されるかもしれなかった・・・とも思っているのです。後悔・・・かな。管理職でなかったら・・・ただ彼女の側に立っていて、守る側にいられることが出来たならどれだけ悩まずにすんだだろう・・って思います。ほんの1年前、まだオペレーター側の人間だった自分が今の私をみたら・・・・きっと、どれだけ情けないやつなんだって思ったはずです。器でないのは・・・自分が一番よく知ってるんですから・・・・・。