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数学 (統計学) の話をします。 よく「分散投資をしろ」と言われますが、その意味はどういうことでしょうか。 相場は未来のことはわかりません。だからこそ相場なのですが。「明日のドル円レート」というのは値はわかっておらず、確率変数だと言えます。そして、ある確率分布に従って実際の値が出現すると考えられます。 確率分布を特徴づける値に、平均と分散があります。分散は値のばらつき具合を表す値です。分散の平方根が標準偏差です。これは偏差値の計算に用いられます。 さて、「明日のドル円レート」の平均がμ, 標準偏差がσだとします。ここで、今 1000 ドル持っているとすると、明日に円で評価した額は平均 1000μ, 標準偏差 1000σ でばらつきます。 2000 ドル持っているとすると、平均 2000μ, 標準偏差 2000σ です。 ところが、「明日のユーロ円レート」の平均がμ′, 標準偏差がσ′だとして、ドル円とユーロ円が全く独立に動くとすると、 1000 ドルと 1000 ユーロ持っていれば、明日の評価額は平均 1000μ+1000μ′, 標準偏差 √(1000000σ^2+1000000σ′^2) となるのです。この例では比較がしにくいですが、同じ額を一つの通貨に全額投資するよりも複数の通貨に分散投資した方がばらつき具合が小さくなります。これは、一つの確率変数を倍にしたときは標準偏差が倍になるのに対し、独立な確率変数の和は分散が和になるからです。 この考え方の応用で、今日から明日の値動きと明日から明後日の値動きとが独立 (分散は同じσ^2) だと仮定すると、今日から明後日の値動きは、分散 2σ^2, 標準偏差 √2 σ となります。 t 日後には標準偏差 √t σ となるわけです。時間が経つほどばらつき具合の増え方が小さくなってきます。 ここで、平均の方は時間に比例した増え方をすると仮定します。すなわち、 t 日後の平均を tμ とします。すると、平均よりも標準偏差の分だけ下側の値 (偏差値 40 に相当) というものを考えると、 tμ - √t σ ですが、これは t = (σ/μ)^2 / 4 のときに最小になり、その後は増えていきます。つまり、平均が増えていくなら、長期で保有すると最終的には減る確率は小さくなるということです。もっとも、実際の相場では生きているうちに減る確率がほとんどなくなることはないのですが。 さて、増え方の平均がさまざま (μ1...μn) で、分散が同じ n 種の銘柄 (通貨) があるとします。これらに p1...pn の割合 (Σpi = 1) で分散投資すると、 t 日後の平均は tΣpiμi, 分散は tΣpi^2 σ^2 となります。このとき、平均よりも標準偏差の分だけ下側の値の最小値が最大となる分散の仕方を考えます。最小値を取るのは t = Σpi^2 σ^2 / (4 (Σpiμi)^2) のときで、この時の値は -Σpi^2 σ^2 / (4 Σpiμi) となります。 c = Σpi^2 / Σpiμi とすると、 c を最小にする pi を求めれば良いわけです。計算は省略しますが、 pi = (c (nμi-Σμj) + 2) / 2n となり、 c は c^2(nΣμi^2-(Σμi)^2) + 4cΣμi - 4 = 0 の解です。 1/n を基本に μi が大きいものは増やす、小さいものは減らすというようになっています。 実際には最小値になるまで放っておくということはないでしょうが、最小値が大きいということはそれだけ大きく減る確率が小さいということですから、一つの基準として使えそうに思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.11.14 00:05:13
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