健康保険における高額療養費は政令で規定されています。
健康保険法施行令
第四十一条 高額療養費は、次に掲げる額を合算した額から次項又は第三項の規定により支給される高額療養費の額を控除した額(以下この項において「一部負担金等世帯合算額」という。)が高額療養費算定基準額を超える場合に支給するものとし、その額は、一部負担金等世帯合算額から高額療養費算定基準額を控除した額とする。
- 一 被保険者(略)又はその被扶養者(略)が同一の月にそれぞれ一の病院、診療所、薬局その他の者(略)から受けた療養(法第六十三条第二項第一号 に規定する食事療養(略)、同項第二号 に規定する生活療養(略)及び当該被保険者又はその被扶養者が第五項 の規定に該当する場合における同項に規定する療養を除く。以下この項から第三項まで及び第四十三条の二並びに附則第二条において同じ。)であって次号に規定する特定給付対象療養以外のものに係る次のイからヘまでに掲げる額(七十歳に達する日の属する月以前の療養に係るものにあっては、二万千円以上のものに限る。)を合算した額
以下略
第四十二条 前条第一項の高額療養費算定基準額は、次の各号に掲げる者の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
- 一 次号又は第三号に掲げる者以外の者 八万百円と、前条第一項第一号及び第二号に掲げる額を合算した額に係る療養につき厚生労働省令で定めるところにより算定した当該療養に要した費用の額(その額が二十六万七千円に満たないときは、二十六万七千円)から二十六万七千円を控除した額に百分の一を乗じて得た額(この額に一円未満の端数がある場合において、その端数金額が五十銭未満であるときは、これを切り捨て、その端数金額が五十銭以上であるときは、これを一円に切り上げた額)との合算額。ただし、当該療養のあった月以前の十二月以内に既に高額療養費(略)が支給されている月数が三月以上ある場合(略)にあっては、四万四千四百円とする。
以下略
ただし書きが適用されない場合を数式で書くと、高額療養費算定基準額は「当該療養に要した費用の額」を x として 80100 + round((max(x, 267000) - 267000) * 0.01) となりますが、整理すると max(round(x * 0.01) + 77430, 80100) となります。
「厚生労働省令で定めるところ」は次のようになっています。
健康保険法施行規則 (厚生労働省令)
第百条 令第四十二条第一項第一号 若しくは第二号 、第二項第二号又は第四項第一号の厚生労働省令で定めるところにより算定した療養又は特定給付対象療養に要した費用の額は、令第四十一条第一項第一号 及び第二号 に掲げる額を合算した額若しくは同条第二項第一号 及び第二号 に掲げる額を合算した額に係る療養又は同条第一項第一号 イからヘまでに掲げる額に係る特定給付対象療養に係る療養に係る次の各号に掲げる額の区分に応じ、当該各号に定める額又はその合算額とする。
- 一 令第四十一条第一項第一号 イに掲げる額 法第七十六条第二項 又は第三項 の規定により算定した費用の額
以下略
そこで法律に戻ると、
健康保険法
第七十六条 保険者は、療養の給付に関する費用を保険医療機関又は保険薬局に支払うものとし、保険医療機関又は保険薬局が療養の給付に関し保険者に請求することができる費用の額は、療養の給付に要する費用の額から、当該療養の給付に関し被保険者が当該保険医療機関又は保険薬局に対して支払わなければならない一部負担金に相当する額を控除した額とする。
2 前項の療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより、算定するものとする。
3 略
4 保険者は、保険医療機関又は保険薬局から療養の給付に関する費用の請求があったときは、第七十条第一項及び第七十二条第一項の厚生労働省令並びに前二項の定めに照らして審査の上、支払うものとする。
以下略
要するに患者が負担する分と保険で支払われる分を合わせた医療費の総額のことのようです。
ところで、「一部負担金」とは、
第七十四条 第六十三条第三項の規定により保険医療機関又は保険薬局から療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該給付につき第七十六条第二項又は第三項の規定により算定した額に当該各号に定める割合を乗じて得た額を、一部負担金として、当該保険医療機関又は保険薬局に支払わなければならない。
- 一 七十歳に達する日の属する月以前である場合 百分の三十
以下略
第七十五条 前条第一項の規定により一部負担金を支払う場合においては、同項の一部負担金の額に五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。
端数処理する前の金額を指すようです。つまり x * 0.3 です。
そこで高額療養費が支給される場合は、 x * 0.3 > max(round(x * 0.01) + 77430, 80100) の場合で、 x * 0.3 > round(x * 0.01) + 77430 かつ x * 0.3 > 80100 で x > 267000 の場合となります。この場合は round(x * 0.01) + 77430 ≧ 80100 なので、高額療養費算定基準額は round(x * 0.01) + 77430 となり、高額療養費の額は x * 0.3 - (round(x * 0.01) + 77430) となります。
医療機関の窓口で支払った金額 (の食事療養などを除いた部分) から支給される高額療養費の額を引いた正味の患者負担は、高額療養費算定基準額よりも一部負担金の 10 円未満の端数の分だけ多かったり少なかったりします。四捨五入なので多くなる方が多いです。 x * 0.01 + 77430 と比べると、 x の 100 円未満の端数が 50 円のときに 5.5 円切り上げられます。
x ですが、高額療養費支給の際は、法第七十六条第四項の審査を経た金額が使われるようです。これに対し、医療機関の窓口で支払った金額は審査前の金額なので、審査により減額されたりすると、正味の患者負担が思った以上になってしまうことになります。減額幅の三割を患者が負担することになります。これをどう考えるべきかは難しいところです。