本のタイトル・作者
ラーゲリ〈収容所から来た遺書〉 [ 辺見 じゅん ]
本の目次・あらすじ
第1章 ウラルの俘虜
第2章 赤い寒波
第3章 アムール句会
第4章 祖国からの便り
第5章 4通の遺書
感想
2022年306冊目
★★★
映画「
ラーゲリより愛を込めて」が気になって、とりあえず原作がどんなものなのかコミカライズ版を読んでみた。
原作は辺見じゅんさん『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』。
コミック化するにあたって端折っているところがあるのだろうなと思った。
結局こういうのって、コミカライズ読んで細部が知りたくなって原作も読むことになる。
じゃあ最初から原作読んでたらいいやんっていう話なんだけども。取っつきやすいのはコミックなんだよ。
第二次世界大戦終了後、ソビエト連邦の強制収容所で捕虜となった日本人兵士たち。
元満鉄調査部所属の山本は、ロシア語が堪能。
極寒の地でいつ帰国が叶うかも分からない絶望的な状況において、勉強会を開き、句会を開き、文化部長をつとめる。
しかし日本との手紙のやり取りが解禁されてもなお帰国は叶わず、山本は病死する。
極秘に残された彼の遺書を、仲間たちは生命を賭し分担して暗記する。
いつか日本へ帰る日のために――。
1956年。
一切の文書の日本への持ち帰りを禁じたソビエトから帰国した仲間たちは、それぞれの記憶をたよりに遺書を復元し、山本の妻子へ彼の最後の言葉を届ける。
次々と届く仲間たちからの遺書。
そして1987年、山本の死去から33年後。最後の遺書が、家族のもとへ届けられた。
これもう、最後泣いてしまった。
遺書があってもなくても、変わらないと言えば変わらないわけじゃないですか。
家族は遺書があったっていうことを知らないのだから。
でも、それを、なんとか伝えようと、残そうとしてくれた人たちがいて。
何年先か、何十年先かも分からない。
自分が生きているうちに日本に帰れるかも分からない。
山本の家族に伝えられるかも分からない。
けれどその時が来た時のために。
ずっと、一言一句たがえずに覚えておけるように、隠れて暗唱し続けて。
大丈夫。覚えている。大丈夫。
それを絶えず確認して。
なんていうかさあ、もうさあ。
こういうことがほんの数十年前にあったんだよなあ。
私の曾祖父は戦死しているけど、彼らは本当にそこにいたんだよね。
遠い物語のように感じるそれは、地続きの、ちょっと前のことで。
その傷を抱えながら、御存命の方もいる。
―――このあとに続く人は、どれほど幸福な人達だろう。
「
戦争は女の顔をしていない [ スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ ]」で、自分たちが最後の戦争をしているのだと思っていたと書いてあった。
最後の戦争。この後に続く平穏で幸せな暮らし。
なのにどうして、私たちは同じことを繰り返しているのだろう。
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熱源 [ 川越宗一 ]
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