本のタイトル・作者
その本は (一般書 395) [ 又吉 直樹 ]
本の目次・あらすじ
本の好きな王様は、二人の男に世界中をまわって、めずらしい本についての話を集めてくるように命じた。
一年後、起き上がることもできなくなった王様に、二人は一晩ずつ話して聞かせた。
本の、話を。
引用
どんな人も、自分自身を救うことはできない。
できるのは、自分以外の誰かを救うことだけなのだ。
だからこそ、誰かを救う努力をしなければいけないのだ。
他の誰かに、自分を救ってもらうために。
感想
2023年061冊目
★★★
テレビ番組「
世界一受けたい授業」にヨシタケシンスケさんが出演していらっしゃった時、この本を紹介していたので読んでみたかった本。
読むまで時間がかかって、もう文庫本化もされてんじゃん…。笑
想定が凝っていて、重厚な雰囲気。
中のデザインもかなり趣向を凝らしてある。
又吉さんとヨシタケさんが交互に、文章とイラスト(絵本ぽい)で語るさまざまな本を巡るお話。
「その本は〜日本です」とか、「ソの本は、ファとラの間にある」とかいうお巫山戯の面白いものもあり、ホラーちっくなものもあり、じんわり来るものもあり、「本って一言で言っても、そのジャンルって様々だよなあ」と改めて思う。
本が好き、といっても、それって「スポーツが好き」「映画が好き」くらいの広さであって、その「好き」の細分化されたジャンルが合うかどうかって別。
けどどちらかというと、スポーツの広さ(「野球が好き」と「アイススケートが好き」)の差異ほど、本が好き、のときの本のジャンルは広く捉えられていないと言うか、もっと狭いところに見られている気がする。
本好き、というと十把一絡げにされるみたいに。
又吉さんの話では、少女と少年の交換日記の話が一番良かった。
ああでも、まだ生まれてもいない娘の結婚式のために、トランペットを習い始めた話も素敵だったな。
ヨシタケさんの話の中では、自分のために書かれた本の話。
173ページの絵(山程の自分に届かなかった本が後に、波が引いたあとのように堆積していて、自分はただ1冊の本を手に取っている)がこの本のなかで一番好き。
本を書くことをボトルにいれて手紙を流すようと表現しているのも、私が今までずっと感じてきたこと同じで、「そうそう」と思った。
本って不思議。
それは紙という繊維の集合体の上に、インクという染みをつけただけのもの。
それが何十年も何百年も、千年も先まで残る。
違う国の別の時代の人の言葉が、まるで今ここに生きる自分のために書かれたような、個人的な手紙を受け取ったように感じる。
「どうして私のことが分かるんですか?」
「なぜそんなにも私のことを知っているんですか?」
そう聞きたくなることが、幾度もあった。
本を閉じると終わってしまう世界。
ともに旅した仲間たちとの別れを、残りのページ数を見て悲しんだ。
彼らは世界中で、いったい何人の個人的な友人になっただろう?
私は本に救われてきた。
文字が読めるようなったその時からずっと、ずっと本を読んできた。
文字を食べるように言葉を貪った。
「ノマちゃんの関西弁は変だ」とよく言われる。
それは私が、現実で会話するよりも、活字の世界で生きてきたからだ。
彼らが私を育てた。
きっとこれからも、私は本を読んで生きていく。
誰かの言葉を支えに、誰かの言葉に救われて。
王様は、最期に言う。
「やはり本は面白い」
これまでの関連レビュー
・
人間 [ 又吉直樹 ]
・
思わず考えちゃう [ ヨシタケシンスケ ]<
・
欲が出ました [ ヨシタケシンスケ ]
・
にげてさがして [ ヨシタケシンスケ ]
ランキングに参加しています。
「見たよ」のクリック頂けると嬉しいです。
にほんブログ村