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2023.04.27
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テーマ:読書(8491)

書名



名探偵のままでいて [ 小西 マサテル ]

引用


祖父は真面目な面持ちで、
「卒業する皆さん。あなたたちに無限の未来など待ってはいません」といいきった。
「すべては有限です。終わりがあります。若さという武器は、あっという間に錆びついていってしまうのです。望む未来を手にしたいのならーーーどうか、冒険してください。以上です」


感想


2023年088冊目
★★★

第21回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
元校長の祖父に憧れ、教員を目指した孫娘・楓。
けれどレビー小体型認知症を発症した祖父は、記憶を零していく。
日常で起こる謎を、祖父のもとへ持ち込む楓。
大の本好き・ミステリ好きの祖父は、その時ばかりは嬉々として安楽椅子探偵となる。

設定にいささか無理があるきらいはある(安っぽい連ドラみたいな)。
でもサブキャラクターが良くて、最後まで気持ちよく読めた。
(最後の犯人役は「こいつ…」となったけど)

特におじいちゃんが校長先生をしていたときのエピソードが好き。
子どもとすれ違うたび、「今どんな本を読んでいるの」と声をかける。
卒業式には、卒業証書と一緒にその子のために選んだ本を1冊手渡す。
なかにはホラー系のアクションゲームソフトを手渡された子もいる。
「世の中で起こるすべての出来事は物語なんだ」が口癖だったおじいちゃん。
子どもたちには物語が必要なんだ、という信念を持っていたおじいちゃん。

私は字を憶えてからずっと本を読んでいて、大人は私が「本を読んでいること」を褒めはしても、その中身に興味を持つことはなかった。
本を読む行為こそが、その容れ物が正しいみたいに。
「何の本を読んでいるの?」と訊くのはせいぜい話題をつなぐためなのだと、真面目に答えていた私はある時気づいた。

彼らは、会話の糸口を探しているだけ。
何を話せばいいか分からない子どもを相手に、応対の接穂を繋いでいるだけ。
そうすれば喜ぶと思っているだけ。
彼らは私が何を読んでいるかなんて興味がない。
まして私がそれをなぜ読んでいるか、それを読んでどう思ったか、何を考えたかなんて。

けれどそれは裏返せば、私は本の世界ではどこまでも自由ということでもあった。
誰からも検閲を受けない物語。たくさんの言葉。溢れて溺れるほどの。
読んで、読んで、読んで、読み続けてきた。

おとなになった今でも、私が本を読むと知ると、「偉いね」と言う人がいる。
正しい容れ物。
空でも、きっと気付かれない。
立派な表紙の、中身が白紙であっても。

ーーー何の本を読んでいるの?

それが、見せかけの隙間を埋める緩衝材ではなくて。
主人公の祖父が声をかけたように、「話して」という合図なのだとしたら。
それが言える大人であれたら、いいなと思った。


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最終更新日  2023.04.27 06:02:47
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