書名
われらの牧野富太郎! [ いとうせいこう ]
目次
牧野富太郎博士、われらのヒーロー!
1 牧野博士ヒストリー
2 プランツ・パーティ!!!
3 われらの牧野富太郎!
4 長田育恵×いとうせいこうー牧野博士の「らんまん人生」を語り尽くそう
5 われらの牧野植物園ガイド
6 牧野富太郎とめぐる植物の旅in高知
7 牧野博士のたのしい蔵書
8 牧野富太郎、驚異のセンス
付録 植物採集行進曲
引用
でもいつも、誰かが手をさしのべてくださるんです。それはもう不思議なほどで。みなさん、ひょっとしたら夢を託すような気持ちがおありになったのかもしれませんね。自身は世間に折り合いをつけて生きているが、あの男は傷だらけになっても幼い頃の志のままに道を突き進んでいる。しかも楽しそうに。どうか、そのまま生き抜いてみせてくれって。
感想
2023年131冊目
★★★★
いとうせいこうさん、確か植物がお好きで、ネットで何かそういう連載をしていらっしゃたのをずいぶん昔に読んだ記憶がある。(ほぼ日のコンテンツだったかな?)
そこで、道やらに空き地に「余白」があると、すぐにプランターを並べて植物で埋め尽くす人たちのことを「花と緑のテロリスト」と呼んでいたことを印象深く覚えている。
今回の「らんまん」にも登場されて、いとうせいこうさんは里中博士を演じていらしましたね。
この本は、牧野愛が炸裂した一冊。
とにかく執筆陣が豪華で、「我らがヒーロー」である牧野博士を敬愛する気持ちがたくさん詰まっていて、豪華な二次創作ファンブックという感じだった。
ドラマにあわせて雨後の筍のごとく出版されてる牧野本とは一線を画す。
戦時中に学徒動員がかかっていた学生が、牧野先生と出会ったときの話を語る。
先生は、日本中の採集をするために、私の家に2枚標本を送ってくださいと言っていたのだそうだ。
同定料は無料。1枚は名前をつけてお返しします、と。
牧野植物園の整備をされていた方のお話では、公園整備にお金をかけるだけではだめなんだ、という話が興味深かった。
それでは管理する人がいないから、地元の人とタネを育てるところからやる。
造園業者ではなく、地域の人を育てる。
佐川町は今では、「まちまるごと植物園」という取り組みをしている。
スエコザサが入った「マキノジン」というお酒を作っているのも知らず。
どんな味がするんだろう。飲んでみたいな。
ドラマの脚本家の方との対談も掲載されていて、ドラマは出会いの連続が最後には図鑑のように見渡せるというコンセプトなんですって。
ああ、たしかに毎週植物のタイトルがついていて、出会いがありますねえ。
そして牧野博士をモデルにした小説『ボタニカ』の朝井まかてさんが、奥さん視点でインタビューに応じている形式で書いた描き下ろし(引用部)も。
写真もたくさんあって、超満面の笑みとか、植物同好会の仲間と座り込んでいるときのとか、きのこ(ニギリタケ)を両手に持ってほっかむりして踊っている姿とか。
おちゃめだなあ、マキノは。
蔵書印も載っていて、「繇條書屋(ようじょうしょおく)」ってあるんですよ。
ネットで調べたら「繇條とは草木が生い茂るという意味」なんだって。
たぬきのねぐらと呼ばれた彼に相応しいな。