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カテゴリ:【読書】ライトノベル
書名 最後の晩ごはん 兄弟とプリンアラモード(19) (角川文庫) [ 椹野 道流 ] 感想 元2.5次元舞台俳優の五十嵐海里が、スキャンダルで芸能界を追われ、東京から実家のある神戸に逃げてきたところで行き倒れ。 そこへ通りがかった定食屋「晩めしや」の主人・夏神に拾われる。 幽霊が現れる不思議な定食屋で、メガネの付喪神・ロイドと共に、働き始めた海里だが…。 からの、シリーズ19作目。 今回は主人公・海里ではなく、サブキャラである海里のお兄ちゃんがメインの話でした。 船乗りだった二人のお父さん。 海里が幼い頃に海の事故で亡くなってしまい、お母さんはそれで心を壊した。 うつ状態で横になっているだけのお母さん。 高校生だった兄は、ひとりで家事と幼い弟の育児をこなしていた。 現在、お兄さんの夫婦は特別養子縁組を考えている。 そこでお兄さんは、昔の記憶を思い出す。 ギリギリまで追い詰められていた当時の自分が、幼い弟の首を締めた記憶。 自分は父親になる資格なんてないんじゃないか、一度失敗しているのだからーー。 その時の情景がリアルに目に浮かぶようで、胸が苦しくなった。 表面張力でなんとか溢れないような、ギリギリまで注がれたグラス。 それが、最後の一滴で溢れ出す。 今でいうヤングケアラーだった、とこの本で言っているけれど、名前をつけるというのは大切なことだな。 昔はそれが当たり前だった。 「家族」なんだから、お兄ちゃんなんだから、お姉ちゃんなんだから。 お手伝いという領域として家族運営の一端を担うことは、必要なのだけれど。 肩代わりしてくれる人がいない重圧を背負わされることは、それは大人の仕事を押し付けているだけなんだ。 幼い海里もまた、お母さんとふたりで家にいる間は、ネグレクト状態にあったんだよなあ…。 ぐるぐる考える兄弟に、夏神さんは自分の師匠から贈られた言葉を伝える。 罪も恩も、天下の回りもん。 相手がわからん、あるいはもうこの世におらんで、どうにもならんこともある。そういうときは、腐らず諦めず、他の誰かに、そやなかったら、世間様に、償うて、恩返ししていくんや。 そうして誠実に一生懸命生きとったら、いつかは回り回って、伝えたい人んとこにもお前の人となりは伝わる。償いも恩返しも、順繰り順繰り送っていったら、いつか目当ての場所に辿り着く。たとえ辿り着かんかっても、無駄にはならん 師匠はほんまにええ人やし、出来たお人や。 海里は兄のために、父親との思い出の味であるという「プリンアラモード」を作る。 これ、冒頭の店の整理をしていて、師匠のプリンアラモードの容器が出てきた場面がここに繋がるのか!と思った。 これもまた、順繰りに伝わっている。 師匠から夏神さんへ、夏神さんから海里へ、海里からお兄ちゃんへ。 このシリーズを読むと、いつも美味しいものが食べたくなる。 今回はプリンアラモード。食べたいな〜。生クリーム添えて。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.09.21 08:21:25
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