書名
ひとりだから楽しい仕事 日本と韓国、ふたつの言語を生きる翻訳家の生活 [ クォン・ナミ ]
目次
プロローグ おばあちゃんになっても翻訳を続けたい
日本との縁
第1章 今日は仕事をがんばるつもりだったのに
テレビの中の翻訳家/私の本だと言いたくて/日本小説がブームだった頃/翻訳料金が上がった理由/印税か? 買い切りか? ほか
第2章 銭湯の娘だった翻訳家
辞書の編集者/40代の佐野洋子/訳注をつける/紀伊國屋書店/史上最年長の芥川賞受賞者/ある作家の人生/小川糸さんに会った日 ほか
第3章 著者になってみると
GUCKKASTEN ハ・ヒョヌさんの推薦文が欲しくて/ペ・チョルスの音楽キャンプ/お母さん、私すごいでしょ?/本を書きなさい、ナミさん/読者から届いた健康アドバイス/古本を買ったら ほか
第4章 ごくろうさま、あなたも私も
憂うつはインドア派の相棒/Sから始まる言葉/コピーライターになりたかったけれど/愛犬ナムの旅立ち ほか
エピローグ 再び二人で
訳者あとがき
感想
本が好きで、言葉が好きで、言葉にまつわる仕事をしている人の話が好き。
というわけでタイトルが気に入って手に取った本。
この方は日本小説の韓国語翻訳家。30年間で300冊以上を翻訳。
1966年生まれで、シングルマザー。
娘や自分のこと、仕事の話を書いた前著エッセイもよく売れたり、韓国では有名な方(らしい)。
ゆるくて面白かったです。前著も読みたくなった。
読んでいて驚くのが、韓国の人の距離の近さ。
知り合いの知り合い、というようなことの多さ。
縁故大事なんだろうなあ。
そこには「近いからこそ」の遠慮もあるのだけど、なんというか、私からしたらぐっと足を踏み入れる感じがする。
ここでは生きていけそうにないわ、わたし…。
この本は、著者ではなく別の方が日本語に翻訳している。
日本語を読んで韓国語にする能力と、日本語で自分が書く能力は別なのかな。
確かに、英語を読んで日本語にするなら、自分の母語の部分で勝負できるんだけど、その逆は質とレベルをぐっと落とさないといけない(私の場合)。
自分が書く内容が稚拙すぎて「うぎゃああああ」と叫びたくなる。
著者が、翻訳している中で「酒盗」を「酒どろぼう」と訳していたというエピソードは、なかなか興味深かった。
日本人だと「しゅとう」(塩辛)ね、とバックグラウンドがあれば共通理解として認識されるところが、わからない。
それは単純な言語の互換というよりは、「文化」の知識に裏打ちされた「言葉」。
訳注をどこまで入れるか悩む、という著者だけれど、これは注がいるだろう。文化の差異。
ちなみにこの本も、著者がたっぷり韓国の教養を披露してくださっているので(これが韓国では普通の文章の書き方なのか、それともふだん気にしていないだけで日本でもこんな人たくさんいるのか?)、この本にもたくさん訳注がついています。
結局、言葉で表層の部分をAIがどれだけさらりと訳してくれても、その意味を補完するところは人間がやるのだろうなあ。
「これはわからないだろうな」を。
考え方、文化、風習、風俗。
電子ならクリックひとつで説明文が現れるかもしれないけれど。
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