書名
クロコダイル・ティアーズ [ 雫井 脩介 ]
感想
第168回直木賞候補作ということで読んだ本。
タイトルの「クロコダイル・ティアーズ」は、「わにの涙」。
ヨーロッパでは嘘泣きを意味する慣用句だという。
捕食の際に哀れんで涙を流すように見えるということから。
私ははじめ、金原ひとみ『蛇にピアス』みたいな話かと思っていました。
老舗の陶磁器店の跡取りが殺された。
犯人は、妻の元交際相手。
幼い息子を連れ婚家に身を寄せた悲劇の妻。
しかし犯人は、判決が言い渡された際にこう言った。
「あの女に頼まれてやったのだ」と。
若女将として奮闘する薄幸の未亡人は、はたして被害者なのか、それともーーー?
これもうね、私はてっきり若女将(想代子)がクロだと思っていて、子どものDNA鑑定だってすり替えたんだろうと思っていたし、息子に女将を突き落とさせたんだろうと思ってたし、「こいつはいつ尻尾を出してぎゃふんとなるんだ」とスカッとジャパンな展開を期待して読んでいたんですが、最後の最後まで何も起きません。すかっとしないじゃぱん。
エピローグがはじめて想代子視点で、そこで思う。
結局、その人の見ているものってミスリードなんだよな、と。
思い込みと自己解釈。誤解と曲解。
人は見たいものしか見ないし、見えているものしか見えない。
そして一番怖いのって、自分のことが見えていない人なのかも。
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