121.小説の惑星 オーシャンラズベリー篇 [ 伊坂幸太郎 ]
本のタイトル・作者小説の惑星 オーシャンラズベリー篇 (ちくま文庫 いー102-2) [ 伊坂 幸太郎 ]本の目次・あらすじまえがき永井龍男「電報」絲山秋子「恋愛雑用論」阿部和重「Geronimo-E, KIA」中島敦「悟浄歎異」島村洋子「KISS」横光利一「蠅」筒井康隆「最後の伝令」島田荘司「大根奇聞」大江健三郎「人間の羊」編者あとがき引用よく言われるように、今はたくさんの娯楽があります。時間は限られていますし、その中で無理やり、小説を読んでもらいたい、という気持ちはありません。誰もが自分の好きなものを楽しめればいいな、といつも思っています。感想2022年121冊目★★★伊坂さんお気に入りの作品を集めた短編集。「あとがき」に何故それを選んだのか、ということが書かれていて、読後にそれを読むのも楽しかった。私は語り(文体)としては中島敦の「悟浄歎異」、構成は横光利一の「蠅」、話の内容としては島田荘司の「大根奇聞」が好き。筒井康隆の「最後の伝令」は、伊坂さんがあとがきで言われているように、「小説でできることは大半が筒井康隆さんがやっている」んですね。すごい。冒頭で「これ、アニメ「はたらく細胞!!」やん」と思ったんですけど、筒井さんが書いたの1996年だもの。伊坂さんの軽妙洒脱な小説はこういう物語の影響を受けて出来上がって来たんだなあ…と思うと、どの作品もその影が感じられて楽しめた。自分では読まない作家さんや作品にこういう機会に触れられるのは嬉しい。「あの人がおススメしているのなら、まあ間違いないだろう」という信頼。で、こういう本を読むと「自分ならどんな本を作るか?」と思う。編者として「あなたが考える最強の『面白い小説』を集めた短編集を作りましょう」と言われたら、どれを選ぶ?うわあ、難しい。私なら、・芥川龍之介「侏儒の言葉」・梶井基次郎「檸檬」・有島武郎「小さき者へ」・村上春樹「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」は絶対に入れたい。ああでも、村上春樹は「カンガルー日和」でもいいな。新見南吉、宮沢賢治、カミュも入れたいけど、ここらへんは「どの作品だったかな」と探さないと思い出せない。・掃除婦のための手引き書 [ ルシア・ベルリン ]・声をあげます [ チョン・セラン ]らへんを入れても「おっ?」となって面白いだろう。森見登美彦氏も入れたいけど短編か…。やはりここはベタに『夜は短し歩けよ乙女』の第一夜を入れておくべきか。(私は「深海魚たち」のほうが好きなんだけど)伊坂さんもいれたいなあ。何がいいかなあ。若者に向けたメッセージ性でいくと「逆ソクラテス」を入れたい。江國香織、三浦しをん、京極夏彦…お気に入りの作家の名前をあげればきりがないのだけど、短編縛りとなるとなかなか難しい。…なんて、夢は広がりますね。伊坂さんもあとがきで仰っていたけど、どうしても教科書に載っていたような作品を選んでしまいがち。それだけ時間のなかで研がれてきた魅力があるんだろう。残るものには。誰かが本を読んでいると、「どうしてその本を選んだのですか?」と興味が沸く。その人がその本から何を受け取ったか、というのも気になるところなのだけど、それ以前の問題として。そしてそれを見せてくれる「本好きの本を読む本」が、私は好き。もう1冊、「ノーザンブルーベリー篇」もあるので楽しみ。これまでの関連レビュー・シーソーモンスター [ 伊坂幸太郎 ]・クジラアタマの王様 [ 伊坂幸太郎 ]・逆ソクラテス [ 伊坂幸太郎 ]・ペッパーズ・ゴースト [ 伊坂幸太郎 ]↓ 「見たよ」のクリック頂けると嬉しいです ↓