|
カテゴリ:短歌
* かなしみを風の容器と成さしめてひとり立つなる弥生夜の街 * 蒼ふかき五月の空へ限りなく堕ちゆく危惧のあればたのしき * 満天のしろがねの傘ひらくとき遠き月恋ふわれのおろかさ いま、第一集から第四集までの歌集のすべての帯、表紙カバー等を取り去ってみた。一集から三集までは、全て真っ白である。そして、第四集の色は真っ黒である。これほどにシンプルで美しい外観の歌集の群れを見たことがない。 さて、この第四集には、約千首という大量の短歌が載っている。この集を最初から読みながら驚くことは、これほどの数でありながら、全く平凡な歌がないということである。全ての歌が緊張という糸で結ばれている。たえず命と向き合い、闘っているからであろう。これは、氏の尊敬してやまない塚本邦雄の歌においても同じである。駄作の無いのが船坂短歌の唯一の欠点であるといってもよいくらいである。 また装丁、造本の技術等においても、塚本邦雄の影響がある。塚本は、一冊ずつに大変拘った豪華本も出している。また、一頁、一行書きの歌集も出版している。船坂氏も「美研インターナショナル」の「アートへの提案」が陰にあるのかも知れないが、第一歌集から第三歌集までは、頁ごとの彩色、歌の行頭に高低差を付けるなどの工夫もしている。その中での極めつけは、一字空けの表記の仕方である。第四集は、殆んどが半字空けである。読みやすさが目的ならば、一字空けよりもこの半字開けの方がはるかに読みやすい。今後この形が短歌界に普及するかも知れない。 (短歌誌ナイルより) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[短歌] カテゴリの最新記事
|