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カテゴリ:短歌
* かなしみをあまた残してゆく人のために今宵は薔薇を刻みぬ * 深く澄むこころへ寄らず終夜哭く雨に乱されゐるも哀しき * 永らはば限りも知れぬ哀しさにふと相寄りぬ汝れがまぼろし ところで、船坂氏の敬愛する塚本邦雄の歌は、短歌の主体である「われ」から出発して、虚構としての主体へと移って行った。しかし一見、塚本の歌と似ている船坂氏の歌には虚構がない。あくまで徹底した「私」性の歌である。叙情歌にしても心象歌にしても揺るぎなき私性から出ている。 船坂氏は、自身のブログの中で、塚本邦雄の初期の歌の中には暗い抒情の心に沁みる歌があり、それが彼の魅力であると分析している。私は、船坂氏自身の歌にも同様に暗い抒情が漂い、それが魅力となっていると思う。第四集のあとがきでも「どうしても悲しい思い出が先に立ち、歌集全体がやや暗めになってしまうのは止むを得ないことかも知れない」と言っている。(短歌誌ナイルより) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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