『
国鉄ー「日本最大の企業」の栄光と崩壊』 (中公新書)著者の石井幸孝氏は、1987年の分割民営化でJR九州の初代社長に就任。JR九州の経営を軌道に乗せ,1997年,会長就任,2002年退任。
少子化、コロナ禍のいま、鉄道は危機に瀕している。国鉄の歴史に何を学ぶべきか、元JR九州社長が語る。
JR九州の経営改革 (p322-324)
●「お客さま第一」 「地域密着」 のスローガン
JR九州ではスローガンを 「お客さま第一」「地域密着」 に決めた。わかりやすく、国鉄時代にはできていなかったことである。まず、失われてきたお客さまを、運賃の値上げをしないで増やすことを最優先にした。列車のスピードアップをおこない、都市間特急も、都市圏快速・普通列車の組み合わせも増発し、利便性を高めた。沿線の大学や企業・自治体などと相談して、新駅を多数設置、しかも民営化の半年前からすぐに実行した。決めたことを即実行することも、重要だ。
国鉄時代の「利用者」という言葉は廃止した。部外、部内を問わず「お客さま」 という言葉しか使わないことにした。部内で 「利用者」なんて言葉を使っていたら、お客さまの前でもついうっかり出てしまう。習慣は恐ろしいものだ。