アイドルを論じ続けて四〇年超。「推す」という生き方を貫き、時代とそのアイコンを見つめてきた稀代の評論家 中森明氏が(アイドル×ニッポン)の半世紀を描き出す。
「推し」とは :『推す力』p3~p8より抜粋
「推し」とは、応援しているアイドル、タレント、芸能人などのことをいう。アイドルフアンの周辺から広がった言葉だ。
(中略)
幼少期にアイドルに魅せられた。時を経て、ライターとしてその魅力を伝える仕事を続けた。気がつけば、アイドルというジャンルの全体を応援する立場に立っている。
「推す力」を、ずっと生きてきた。
私はこの力こそが、人々を幸福にして、世界を豊かにする、最大のパワーだと信じている。とはいえ、その力の内実を、理屈で説明しつくすことはできない。
そこで自らの生きた「推す力」をたっぷりとつめ込んだこの本を書いたのだ。これは私の人生をかけたアイドル論である。
アイドルは時代の反映ではない。 アイドルは時代の反映ではない。時代こそがアイドルを模倣する。美空ひばりは戦後 復興・高度経済成長の、山口百恵は70年代低成長の、松田聖子は80年代バブルの先触れとして現れ、時代が彼女らを模倣したのだ。 (中森明夫『Namaii』新潮社、1996年)