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テーマ:詩&物語の或る風景(1049)
カテゴリ:読んだ! 読みたい!
【寒がり君と暑がり君】
寒がり君と暑がり君がいました。 今日はとても寒い日。まるで雪でも落ちてきそうな曇り空です。 教室の中は、大きなダルマストーブが赤々と燃えて、外の寒さを感じないほどの暖かさです。 給食が終わった昼休み、暑がり君が言いました。 「僕、暑くて暑くて汗だくだよ。ストーブの炎小さくしてもいいかな?」 すると寒がり君が言いました。 「外は雪が降りそうなくらい寒いんだよ。火を小さくしたら、僕は凍えちゃうよ」 何人かの子供たちが「そうだ、そうだ」と賛同します。 一方、暑がり君の味方をする子供たちも... 「こんなにあったかすぎたら、眠くなっちゃうよ。もう少し火を小さくしてもいいだろう?」 「絶対ダメ!」「そんなのヤダよー」「暑くて苦しいよ!」 教室の中は、子供たちの大きな声が飛び交います。 しばらく大騒ぎをしていると、何となく教室の中の気温が下がっているような気がします。 「あ! ストーブが消えてるよ!」「ストーブ係、石油がないんじゃないの?」 ストーブ係の子が、石油タンクを確認すると、石油はまだまだたくさん入っています。 「なんで消えたの?」「壊れちゃったのかな?」 「暑がり君が火を小さくしろなんて言うから、ストーブが怒っちゃったんだよ!」 寒がり君のひと言に、暑がり君はしょんぼりしてしまいました。 「誰か先生を呼んできてよ」学級委員が職員室に走ります。 そうしているうちにも、教室の中はどんどん冷えてきて、寒がり君はふるえ出しました。 暑がり君は、このくらいがちょうどいいので、心の中で「ざまーみろ」と思いました。 でも、ふるえている寒がり君を見て、ちょっぴりかわいそうになったのです。 暑がり君は、自分のジャンバーを持ってきて、そっと寒がり君にかけてあげました。 寒がり君はびっくりして暑がり君を見ます。 小さな声で「ありがとう」と言いました。 暑がり君のジャンバーは、とても大きくて暖かく、少しずつふるえもおさまってきました。 暑がり君の味方をした子供たちが、寒がり君のようにふるえている子に、それぞれセーターやジャンバーをかしてあげました。 みんなストーブの周りに、寄り集まって体をくっつけているので、ますます暖かです。 「どうした、どうした」そこへ、先生がやってきました。 さっきまで大ゲンカになりそうだったのが、みんなニコニコしています。学級委員はキツネにつままれたような顔をしています。 先生が少しストーブを点検して火を点けると、ストーブはまた赤々と燃え出しました。 みんなビックリして、ストーブを見つめていましたが、少しずつ教室の中が暖まってきました。 「暑がり君、ありがとう。もう大丈夫だよ」と寒がり君が、ジャンバーを返しました。 暑がり君は、少し笑って「うん」と答えました。 でも、暑がり君は暑くて、もう顔を赤くしています。 「先生、暑い人もいるんだ。僕たち寒がりは何か一枚着るから、火を小さくしてよ」 寒がり君の提案で、ストーブの火は小さくなりました。 教室の中は、春のような気持ちのよいあたたかさと、みんなの笑顔でいっぱいになりました。先生も微笑んでいます。 空の上では、雪を降らせようと準備をしていた冬の神さまが、すっかり手を止め、にっこり笑っていました。 終わり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【賢人訓より】 《己の欲せざる所は人に施すなかれ》...おのれのほっせざるところはひとにほどこすなかれ 孔子は弟子の子貢(しこう)から「このひと言なら一生守るべきだということばはありますか?」と聞かれた時に、こう答えた。 「それは、恕(じょ・思いやり)、つまり、自分がしてほしくないことは人にはしないことである」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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