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2005年01月30日
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カテゴリ:給食室だより
給食が済むと、食管や食器を乗せたワゴンを、各クラスの給食当番が給食室に返却にくる。1年生だけは、6年生の給食委員会の子供たちが交代で運んでくる。給食担当の先生も一緒だ。その時に今日の給食についての感想を、子供たちが一言ずつ話していく。
ある日の献立【ごはん、水菜と大根の煮物、アジフライ、ボイルキャベツ、牛乳、みかん】
一人の男の子が「今日の給食で一番おいしかったのは、みかんです」と言った。私は思わず、「み、みかん?」と聞き返してしまった。一緒にいた先生は、狼狽して「みかんじゃなくて他にはないの?」と聞く。その子は、首を傾げているだけだ。私が「煮物はどうだった?」と聞くと、「あ、煮物もおいしかったよ」と言う。心の中で「あのねぇ...」とつぶやいた。

別の給食委員会女の子3人のグループの子たちは、給食が大好きだ。毎回、「今日の給食は全部おいしかったです」と言ってくれる。この子たちは、5年生でも給食委員会だった。給食の感想も、「おいしかった」だけではなく、「嫌いな物だったけど、カレー味だったからおいしく食べられた」とか「私は好きだけど、苦手な子がたくさんいたよ」とか「量が少なかったので、次回はもう少し増やしてほしい」など、情報をたくさんくれる。「今日は組み合わせが変だった」「味が薄くて今いちだった」など、辛口のコメントもきちんと伝えてくれる。

このような情報は、実は私たちにはなかなか伝わってこない。だから彼女たちが運んできてくれる情報は貴重だ。かなり参考になるし、きちんとした意見を持っているのにも驚かされる。
話を聞いてみると、3人とも食べることが大好きだと言う。食べることに興味を持っているのだ。自分で料理をすることもあるらしい。こういう子の家庭では、きちんとお母さんがお料理をして、できるかぎり家族そろって食卓を囲んでいるんじゃないかと想像する。

先日、交流給食があり、私も3年生のクラスに混じって、給食の時間をともにした。
給食当番の「いただきます」の声で、食事が始まった。「先生は何が好き?」(何故か私たち調理員も先生と呼ばれている^^;)とか「これはどうやって作るの?」などと、子供たちが話かけてくる。私も嬉しくなって、色々とお話をしながら食べたのだが、一人の女の子の食べ方が目についた。
この日の献立は【ごはん、味噌煮込みおでん、茶碗蒸し、つけもの】。彼女は、まずご飯だけを半分ほど食べていた。ご飯だけだ。そして、おでんのお椀を持つと、それだけを全部食べた。次は、つけものを完食。残ったご飯をまたご飯だけ食べる。最後に牛乳を飲む。
私は「ははぁ、これが噂に聞く“ばっか食い”かぁ」と思い、彼女に、「なんでご飯とおかずを一緒に食べないの?」と聞いてみた。「口の中で味が混ざるから」と笑顔で言う。私は「?????」状態。もう一人、こちらは男の子。なぜかご飯に手をつけない。全くだ。「どうしてご飯食べないの?」「嫌いだから」...あっ、そー
もう一人、男の子。ほとんど何も食べない。牛乳のみ。全部嫌いらしい。こちらも...あっ、そーである。

こんな中で、学校給食の役割って何だろうと、時々考える。週21回の食事のうち5回が給食だ。これを多いか少ないかはわからないけど、少なからず子供の食生活に与える影響はあると思う。栄養面はもちろんだけど、子供が新しい食材や料理に触れるチャンスになったり、みんなと食べることで自分と他の子との違い(好き嫌いや量など)を自覚したり、大勢で食べる時のマナーを学んだり、分け合うことや譲り合うことを知ったりと、教育的な面からもなかなかのものだ(^^)

今や栄養士さんは、お上からのお達しで、栄養素の計算や衛生上の注意やお金のやり繰りなど、本来「食べる」という部分から発する業務からは、どんどん離れていってしまっている。出したい料理や、やってみたいイベントや、おいしく食べる工夫など、栄養士さんの頭の中でワクワクするようなことがたくさん渦巻いているのに、それができないジレンマを山のように抱えている。

学校の近隣にある畑では、みずみずしい野菜たちが元気に育っている。この野菜を朝獲りしてもらって使えたら...農業や漁業に携わっている方を講師に招いて、どんなふうに食べ物が作られているのかを子供たちに直に教えてもらえたら...牛舎や鶏舎を見学し、命をもらっているということを学んでもらえたら...食べ物を作ること獲ることに参加し、食卓に届くまでの苦労を経験してもらったら...

子供たちに食に関する様々な情報を、色んな角度から届けたいという思いがいっぱいだ。現実は、隣の畑のキャベツを給食室に持ってくるだけでも、たくさんの障害を乗り越えなければならなくて、その手順を考えただけで、気持がしぼんでしまう。まずは「隣の畑のキャベツを給食に取り入れる会」でも発足させなければ...いやはや、なんとも、である。

また、なるべく旬のものを提供し、昔からの日本の行事に沿った献立をたて、季節にあった味にして食べてもらうようにしているが、教室でのきちんとした指導も先生方にお願いしたい。冬至には何故かぼちゃの煮物を食べるのか、土用の丑の日には何故うなぎを食べるのか、お月見にお団子を供えるのはどうしてか...その意味を教室でぜひとも子供たちに教えてほしい。せっかく季節ごとの献立をたてても、だた食べているだけではもったいない。給食の時間もりっぱな教育の場なのだ。

結婚式ではめでたいと言って祝いの宴をもち、お通夜では故人を偲んで親しい人たちが集まってお別れの膳を囲む。私たちは食を介してコミュニケーションを育むことを知っている。アンケートでも、両親と一緒にご飯を食べると答えた子は食事が楽しいと言い、一人でご飯を食べると答える子は食事がつまらないと言う。食事に対する興味を失ってしまった子供が、どんな成長をするのか、考えただけでも胸が痛くなる。それぞれ事情はあるだろうが、できるだけ子供と一緒に食事をし、たくさんのお話をしてほしいと望むばかりである。

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時折寄らせていただいている楽天仲間の井上健太郎さんのHPで、本を紹介していただいた。『子供を救う給食革命』<子育てに奮闘中のお父さんお母さん、児童の残飯に悩む先生方、全国で食に携わっている人たちへ>と帯にある。給食の現場の人間だけでなく、子供に関わっている人全てに、目を通してほしい本だ。教育の職に就いておられる方にはぜひぜひ。
給食のことだけに留まらず、食に関する日本の現状や、子供への熱い思いが伝わってくる本だ。

とにかく、食べるの大好き! という子供たちが増えてくれたら、こんなに嬉しいことはない。
最後に和歌山県でのプロジェクト『未来ある子供たちのために』の一環である出前授業を受けた子供の感想文を載せておく。
【今日は忙しいなか来てくれてありがとうございます。今日やった紙芝居や実験でとてもわかりやすく教えてもらって遊んでいるように勉強できたのでよかったです。今、人間ができることは、いっぱいあって、一人ひとりが一つでも環境・地球にいいことをするといいということがわかりました】(小学5年生)


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【賢人訓より】

 《玉琢かざれば器を成さず》...たまみがかざればきをなさず

 どんなによい玉でも原石のままでは光りを放たない。磨いて初めて輝いてくる。
 人間もどんなに才能に恵まれていても、何もしなければその才能を生かすことはできない。学問や修行を積んでこそ生かされるのだ。

みんなのたあ坊の「賢人訓」 中国編







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最終更新日  2005年01月30日 13時12分36秒
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