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2006.06.25
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カテゴリ:読書


『人間の光と影』

笑顔の太宰治


-20世紀文学の旗出、太宰治に思うこと-

没後50年という歳月の流れにあって、
いまだ、多くの人たちに読み続けられている太宰作品。

私も若き時代、多様な文学にふれ、
又、太宰漬けになられた方もたくさんおられると思います。

一時、太宰作品を通過するのは、
俗に、はしかにかかる青年期の特徴のように、
評されてきた事もあります。

半世紀を、
何とか生き越してきた私からみれば、
青年期に、
何かに執りつかれない事の方が稀有ではないかと。

自分を振り返ってみても、
青春は楽しいだけのものであったか?

青春の渦中にあった時ほど、
不確定で、巨大で、不安で、
只、陽気に笑っていただけのものとは、
違っていたような気がします。

太宰は、
そういう若者達に、強烈な生き様で、
多くの謎とメッセージを残して逝きました。

いつの時代でも、
研ぎ澄まされた感性を持つ
多くの若者達は、生きにくいだろうと思います。

他個と、うまく同化できずに苦しむでしょう。

それが、
自己の個性なのだと認知するまでに
時間がかかるでしょう。

私は、思います。

作家が、
死を賭して置いていったバイブルを。

たとえ、どんな生き恥をさらしたとしても、
きっと、そうしか生きられられようもなく、

たとえ、どんな死に様をさらしたとしても、
きっと、そうしか死ねなかったのだろうと。

けれど、
それが生きる事の真実の叫びであったからこそ、
若者達は、共感し、
思春期から青年期、そのバイブルを、手にするのだと。

そして、生きている限り、
私達人間は、
光と影の間に存在し、
美しい崇高さに満たされ、
苦しみの氷雨に打たれ、
晴れ渡った青空に救われ、
夜には、悲しみで慟哭するでしょう。

最後に、
太宰治も、決して影の中だけで、
39歳という生涯を終えたわけではありません。

彼の心の中にも、
満々と光が差し込み、
その高揚感とサービス精神によって、
私達に、
ユーモアまで、たっぷり置きみやげに残している。


『お伽草紙』

『お伽草紙』

昭和20年10月 筑摩書房刊  

 
太宰治文学碑
太宰治文学碑(蟹田町・観瀾山)


作家、長部日出雄は、

-『桜桃とキリスト もう一つの太宰治伝』により第29回大佛次郎賞-

「日本の純文学の歴史で、かれほど読者をよく笑わせる
小説を数多く書いた人はいない」と記し、
笑いが最も多い作品として「お伽草紙」をあげている。

 近代文学館の収蔵資料展

「青森県のユーモア文学の系譜」で展示中の原稿「お伽草紙」は、

昭和20年、連日の空襲の中で書き始め、

疎開先の甲府の妻の実家で書き上げられたものだ。

太宰は空襲の中、長女園子を背負いなが
らこの原稿を持って逃げたという。

没後、蟹田町の観瀾山に建てられた

太宰治文学碑には次のようにと刻まれている。
 
「かれは人を喜ばせるのが何よりも好きであった」と…







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Last updated  2009.12.11 20:18:15


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