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カテゴリ:シリアスな話
冷え込みが日に日に増す今日この頃。
ジャケットの襟を立て、肩を丸めながら歩く。 すれ違う人々もややうつむき加減。 寒い日は、誰もがこのような姿勢になりがち。 散歩中のおばあさん。犬を連れている。 キリリと鋭い目を持ち、警察犬として有名なシェパードだ。 おばあさんに、シェパード? なんだか変だなぁ・・・ お年寄りが犬を連れている光景に、なんら不思議なことはない。 ただ、私のイメージとして、おばあさんだったら普通は、 シーズーやマルチーズなどの小型犬では?と・・・ シェパードなら、かなりの運動量が必要なはず。 おばあさんで大丈夫? 疑問が頭の中を駆け巡る中、いつの間にか立ち止まり、 私はおばあさんとシェパードの方を見ていた。 1人と1匹。 おばあさんの足取りはしっかりとしているが、ゆったりでもある。 もちろん颯爽とは言えず、ペースとしては遅いと言っても過言ではない。 しかし、握りしめたリードの先にいるシェパードは、 さほど気にしている様子ではなさそうだ。 むしろ、時折おばあさんに目をやりながら、丁寧に歩幅をあわせている。 『いいんだよ、ゆっくりで。僕も急いでないからね。』 まるでそう物語るような瞳で。 また、『僕が守ってあげるよ。だから、心配しないで。』とも言わんばかりに。 少しばかり、恥ずかしさが込み上げて来た。 おばあさんにシェパードは無理だなんて、勝手に決め付けていたんだなぁ・・・ しかし、シェパードはきっと、 他の誰にリードを握ってもらうよりも、他の誰と歩くことよりも、 おばあさんと一緒がいいのだ。 一歩、また一歩と。 前へ前へ、ゆっくりと。 ふたりで。 これから、ずっと。 いつまでも。 なぜなら、おばあさんが大好きだから。 おばあさんと一緒。 シェパードは、それを何よりも望んでいるのだ。 冷え込みが日に日に増す今日この頃。 再び歩き出す私。 暖かさが、染み渡って行く。 気が付くと、背筋をピンと伸ばしていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年11月17日 21時23分04秒
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