座布団が飛んだ。数え切れないほど宙を舞った。大相撲秋場所千秋楽の優勝決定戦。横綱同士の戦いを制したのは、朝青龍。
本割では、一敗で追う白鵬にあっけなく完敗。それまでは全勝の完璧と言えるペースで勝ち続けた横綱の顔に、「信じられない・・・」と言う表情が広がった。しかし、彼はただの横綱ではない。すぐに気持ちを切り替え、挑んだ優勝決定戦での見事な勝利。
「朝青龍は、勝つことで批判に応えている」とは、アナウンサーの弁。
白鵬をすくい投げ、土俵に叩きつけた朝青龍は右手の拳を小さく握る。これまで何度も厳しい叱責の対象となった彼のトレードマークとも呼べる「ガッツポーズ」。しかし、今回もまた彼はそのガッツポーズで勝つことの喜びを表した。そして、姿勢を正し、胸を張って堂々と立つと、今度は両拳を天に力強く突き上げた。
誰のためのガッツポーズ?その視線の先に居たのは?
ファンの人々。朝青龍の4場所ぶり24度目の優勝に歓喜の声を上げ、総立ちになり、割れんばかりの拍手を送るファン。その一人ひとりに対する感謝の気持ちを表現したガッツポーズだったのだ。
確かに、彼は横綱としての品格が懸念される。そう言う意味では、あの千代の富士や貴乃花の足元にも及ばないかもしれない。また、大相撲は日本の格式高い伝統の国技。これも、勿論これからずっと守り続けられなければならないらない大切な事実。
しかし、同時に・・・
観衆(=観る者)があってからこその大相撲でもある。それなら、一人ぐらい彼のような横綱が居てもいいのでは?
朝青龍が出る場所は、必ずと言って良いほど満員御礼となる。「嫌い」と言う方々も、彼から目を離すことができない。彼こそ、そのドキドキハラハラとさせてくれる取組で、国技である大相撲の高い敷居をグッと大衆に近づけてくれた。そしてなりよりも、そのファンの心をしっかりと掴んでいることは、本日の観客の反応を見ても、火を見るより明らかだ。
29歳の誕生日を優勝で飾った朝青龍。まだまだイケる!FIGHT!