ウエストさん(仮名)は、滅多に笑わない。笑ったとしても、薄っすらとした笑みを浮かべるだけ。大声で笑ってるとこなんて、私は目撃したことないし。ウエストさんに近しき方も、そういう表情を見たことないと言っている。
いつも難しい顔をしているウエストさん。声も小さいし、そのトーンも単調。眼差しは常に、真剣そのもの。そして、やはり。笑わない。
そんなウエストさんだけど、これは本人も自覚していることらしい。先日、お会いした時、「もっと笑わなければいけないと思う」と言い出しました。その理由は、「笑うことは、健康にいいから。」
なるほど、その通り。「笑う門には福来る」と言うように、笑いとは人の心だけでなく、体にも効果的に働いてくれるもの。医学的にも、笑いが如何に健康上の諸問題の解決へ繋がるか証明されています。
「この間、テレビで見たんだけど・・・」と続けるウエストさん。どうやら、ご覧になった番組では、ストローを横向きにくわえると、口角が自然と上がり、笑ってるような表情になれる。それだけでも、健康的作用が働くのだとか。
「やってみようと思う・・・」と、ウエストさんは言いました。冗談でしょ?と思いきや、大真面目なお顔。もう、明日にでも。いや、この後すぐにでも!ストローを買って来て、くわえるんじゃないか?というような勢い。真剣に語るウエストさんを前に、ワタクシ。不謹慎だけど、プッと噴き出してしまいました。
そうなの、ここがウエストさんのいいところ!つまり、自分は笑わないけど。極端に、笑いとは遠く離れたポジションにいるにもかからわず!その語る言葉や、出てくる発想で、不意打ち。それこそが、相手の笑いを誘うのです。
笑うことは、素敵だけど。人を笑わすことは、もっと素敵かもしれない。
ほら、「因果応報」とも言うじゃない?これは、「悪いことすれば、自分に返って来る・・・」というふうに、ネガティブな例えとして用いられるケースが多いけど。同時に、「良いことをすれば、自分に返って来る・・・」という意味でもあるんです。
笑わないウエストさんだけど、人を笑わしてくれる。だから、ストローなんてくわえなくてもいい!そのままでいいんですよ!ウエストさんには、いいことがたくさん返って来るはずなのだから。
ウエストさんは、来週から一週間ほど入院されます。手術、きっと上手く行きますよ!元気になって、またたくさん笑わせてください。