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テーマ:心のままに独り言(8847)
カテゴリ:こんなことを、思った
大正生まれ。女性。赤い縁の眼鏡、度はきつめ。髪は長くひっつめ、失礼だけど、薄い。スイスの風景画のタペストリーを買った。旅行には行けないけど、絵を眺めていると心が満たされる。年金暮らし。関東大震災を知っている。戦争を知っている。疎開を知っている。折り紙で蝶を折る、その手つきはとてもしっかりしている。腰はまっすぐ。耳もかなりいい。杖をついている。上着は黒のダウン。
子供を大事にしなきゃだめよ、おばあちゃんはわるいから子供を持たなかったけど、子供は宝だもの。だんなさんを大事にするのよ、星の数ほどいるひとの中から縁あって一緒になったんだから、おかずをたくさん作ってあげなさいよ。ご両親を大事にしなきゃだめよ、100均でいいのよ、ときどき何か買ってあげなさい。おばあちゃんには誰もいなくなっちゃったけど、家族を大事にしなきゃだめよ。 こうしてこうしてこう折って・・・近くなら、うちで教えてあげられるんだけどねえ。きれいな色で、蝶々たくさん作ってあげなさいね。ああ、寒くなってきた・・・わたしはやまもとといいますけどね、近くなら、もっといろいろ教えてあげられるんだけどねえ。 となり町まで、風船を買いに行きました。 折り紙も買いました。ムスメに折り紙を渡しながらのベビーカーでの帰り道。 ひとりのおばあさんに声をかけられました。 さみしい のかなあ、と思いました。 ずっと じっと お話しを彼女の瞳を見ながら聴きました。1時間近く、なぜかムスメはグズりませんでした。 震災のことや戦争のこと、もっと教えて欲しいなと思いましたが、それは伝えませんでした。 夕方だったから。 名乗ってくださったやまもとさんに、ワタシも名乗って、別れました。 夕方じゃなかったら。?? 親しくなるのがこわいのは、知らない人だからじゃなく、最期をみとるかもしれない未来が重いから!!!? 老人の背負う現実の 真の過酷さ と 恐ろしくシビアな自分 に気付き 寒気の止まらぬ帰り道。 せめて、やまもとさんのこととその名前を、覚えているひとになろうと思いました。「MONSTER」じゃないけれど。 だれもが明日死ぬかもしれないわが身。ワタシがやまもとさんより長生きする保障はどこにもないのに傲慢だけど、ワタシの生きる限り、覚えていようと思います。 赤い眼鏡のおばあちゃん。やまもとさん。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006年04月29日 12時05分12秒
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