尺には尺を そして 終わりよければすべてよし
新国立劇場のシェイクスピアシリーズです。2009年のヘンリー六世を皮切りに歴史劇シリーズを上演して、一旦解散(するとみせかけて?)再度結集された座組です。現代に通じる解釈を交えながらも、それがあざとくなく、いつのまにかシェイクスピアの世界にいざなってくれる鵜山さんの演出がとても好きです。品があるというか。日程では尺尺の初日、終わりよければの初日という順番でした。私は終わり~のほうを先に観ましたが、最後の王(なのか1人の役者としてなのか)のセリフを聞くと、やはり尺尺→終わりの順番のほうがよかったのかもと思いました。あの広い扇型の舞台。傾斜も付いていて前方には池が二つ。白い草花が雑草のように植わっている。終わり~は後ろに大きな白い布が帆のように広がっていて、それがベッドトリックの場面にも使われていた。あの場面はぱっと布が下りてくるだけで、とても上品でした。尺尺ではレンガ色の建物が象徴的。(シアタートークの鵜山さんによると)都会なので雑然とした雰囲気を出すために、草むらにはゴミが落ちているそう。リチャード三世の木馬や、なぜかブラジャーなんかも草にひっかかっていた。池はどちらの作品でも効果的に使われていた。とくに終わり~ではバートラムが王に押されて池に落ちるなど。私が下手最前で観たときはパラッとしぶきがかかりました。(座席にはビニールとタオルが用意されていた)作品はどちらも「問題劇」「ダークコメディ」とされるもの。結構ムリな設定で、面白いような面白くないような。でも役者が演じるとこれが途端に面白くなるのが不思議。さらに今回は同じ役者が二つの芝居を演じているので、ヘレナとマリアナ、バートラムとクローディオ、と全く違うキャラクターに繋がりを見いだしながら観ることができるところが楽しい。終わり~で哀れなぺーローレスを演じた亀田さんは、尺尺では死刑執行人(とフロスの二役)を演じている。処刑されかけるぺーローレスと執行人のアブホーソン。このキャスティングは素晴らしい。亀田さんファンは必見です。*長く同じ座組で演じていると悲しい別れも。中嶋しゅうさんや渡辺徹さん、美術の島次郎さんなど…。浦井くんもいつも言っていますが、舞台上に彼らが一緒にいて一緒に作り上げていると。いち観客の私も、このシリーズを観続けてきたからこそ感じるものがあります。終わり~のバートラムの最初の登場では一瞬、徹さんかと見間違えました。(体型の話ではありません)次は何の作品が上演されるのか楽しみでなりません。とりあえず、今回はあと3回観る予定です。