テーマ:エヴァ小説を書いてみよう!(3)
カテゴリ:小説
あれはまだ、俺様がひ弱なガキの頃の話。
道場の先輩が出場する試合会場に向かうため、駅で電車を待っていた。 休日で人が少ない筈なのに、何故か俺の並んでいる列だけは混んでいた。 電車が着き、扉が開く前に、2列に並んだ人達は扉の左右に分かれた。 扉が開いて、大柄な男が降りてきた。 その男が通り過ぎるのを待って車内に入ろうとしていると、信じられない事が起こった。 肩を怒らせ、肘を広げて、並んだ人達をなぎ倒すように降りていったのだ。 当然、列の先頭にいた俺は、まともにぶつかってしまった。 後ろに並んでいた人達が、やり過ごして車内に乗り込んでいる間、何が起こったのかも分からず、俺は車外で呆然としていた。 自分がわざと突き飛ばされたのだということを頭が認識した瞬間、振り返り、突き飛ばした相手を目で追った。 相手は、俺を突き飛ばすほど急いでいた筈の相手は、階段を下りもせずに、こちらを向いて立っていた。 目が合った瞬間に、胸ぐらを掴んで車内へと押し込んできた。 何が起こったのか分からないまま、胸ぐらを捕まれた俺は、走り始めた電車の車内で振り回された。 車内にいる人達は、誰もが注目しつつも目を反らして見ていない振りをしていた。 俺を振り回している相手を冷静に見てみると、身長は190cmくらい、体重は90kgを超えるくらい体格で、顔も腹もぶくぶくに太った醜悪な奴だった。 狭い車内で、これほど体格の違う相手に胸ぐらを捕まれてドアに押しつけられている時点で既に喧嘩にはならない。 唾を飛ばしながら、訳の分からないことを喚き続けている奴に、なにか言おうとしたが止めにした。 圧倒的に不利な体勢ではあったが、致命的な攻撃を喰らう事はないと踏んでいた。 何故なら、相手は右手で俺の胸ぐらを掴んで、左手で重そうなアタッシュケースを持っていたからだ。 そのケースを放して殴りかかってくるかというと、そんなことはせずに、右手でドアに押しつけてくるだけだった。 持ち上げられている不快な感覚と、近くから飛んでくる唾を我慢すれば、なにを遊んでいるんだと言うくらい、なんのダメージも与えてこなかった。 次の駅に着くため、電車が減速したときに、車外に出るように言った。 ソイツはなにが楽しいのか、俺を持ち上げたまま車外へ出た。 如何にも揉めていそうな二人を後目に、電車は何事もなかったかのように発車していった。 一緒に降りた乗客達も、皆、我先にと通り過ぎていき、ホームの上には、俺と奴だけが取り残された。 勝ち誇ったヤツは、俺を振り回しながら、まだ喚き続けている。 持ち上げられたままだと喧嘩にならないので、とりあえず、ヤツの右手の小指を取った。 取った瞬間、思いっきり捻り上げた。 更に喚き声を上げながら、ヤツは俺を放した。 逆上して襲いかかろうとするヤツの左フトモモに牽制のローを入れた。 たいした威力のない、牽制の一発。 動きを止めておいて、悪趣味な眼鏡を不細工な顔面ごと叩きつぶしてやろうと拳を振り上げたとき・・・・・。 ヤツは、指を掴み、びっこを引きながら、泣きそうな声で、傷害罪で訴えるぞ、と叫びだした。 呆れた俺が呆然としている間に、乗客から通報されたらしい駅員がホームに駆けつけ、二人を引き離した。 ヤツは、しきりと駅員に自分がどれだけ酷い暴行を受けたかを、切々と訴えていた。 駅長室で、俺と奴の説明が全く食い違うために、結局、警察を呼ぶことになった。 パトカーと待つ間、ヤツと俺は改札付近に放置され、通り過ぎる人達の好奇の目に晒された。 ヤツはしきりと、携帯で知り合いに電話し、自分が酷い目に遭ったことを訴え続けていた。 俺は、人通りが途切れたら、この馬鹿をはっ倒して、逃亡する事だけを考えていたが、結局、チャンスは訪れなかった。 警察署で、なんと俺は取調室に入れられて調書を取られた。 相手の警官の応対は丁寧だったが、このままここにいると、カツ丼でもとってくれそうな錯覚に陥りそうだった。 結局、ヤツから俺への暴行であることは認められたが、肝心の俺に怪我はなく、ヤツの方は怪我はないものの、指とフトモモの痛みを訴えているという状況になった。 裁判で訴えますか?と聞かれたので、断り、警察を後にした。 こんな目に遭って、万が一、加害者にでもされたら目も当てられない。 半日を無意味に潰して、自宅に戻った俺は、後日、試合の応援に来なかったことで先輩からヤキを入れられた。 踏んだり蹴ったりな日だった。 教訓:喧嘩するならとっととシバいて、とっとと逃げること! 警察に任せても、時間の無駄! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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