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人気ランキングに参加しています。良かったらお願いします。 にほんブログ村 ^-^◆ 患者さんに騙された 盲目の父に教えられたこと[上] 父に呼ばれて治療室に行くと…………、 父はいつもお金を入れている箱を手にしていた……。 父は、目が全く見えない。全盲だ。 マッサージを仕事にしているが、患者さんからの支払いと、 お釣りのやり取りがけっこう大変で、 いつもこの小さな木の箱を使ってお金を管理している。 朝一番に、お釣りの準備として千円札を10枚箱に入れて……、 スタート……というわけだ。 1日の収入が分かるように他のお金とは分離して、 管理しているわけだ……。 「光男……この中に、幾ら入っているか……?」 箱を受け取って調べてみた。千円札が7枚入っている。 「千円札で……七千円やけど……」 「……やっぱり……そうか……やっぱり……な」 「どうしたん……?」 「五千円札って言われたんで……、 四千円のお釣りを渡したんだが…… どうも、渡された札が千円札だったようだ………。(-_-)」 「千円札と五千円札じゃー見た眼ですぐ分かるよ。 何かの間違いじゃない……? もう他にお金入れてる所、無いの……?」 「全部、この箱で管理している事はお前も知っての通りだ。 まず、総額が一万円より少なくなる訳はない……」 「そうやね……。誰……?間違えた人の心当たり……あるの?」 「札の大きさは似てるが、図柄は全然違うんだよな……。光男」 「……うん、よほど……眼の悪い人じゃないと……、 これを間違える事はまず、無いと思うね……」 「眼が見えないと思って、見くびられたか…………」 「誰……? そんな事する人いる?」 「所崎さんよ…………」 「ああ、……常連さんじゃない……」 「情けないなぁ……眼が見えんという事は……」 「……でも、すぐばれてしまう事を……やるかなぁ……。 他のお客さんは……? お金……他には無いの? ポケットとか……」 「今日は……患者さんは所崎さん一人……。はっきりしている。 ……情けない事やなぁ……(;一_一)」 「そう……お父さん、ちょっと所崎さんの家に行ってくるよ。 そんなに目の悪い感じでもないし……僕も腹が立ってきた」 「……」 「ねっ……、行ってくるよ。はっきりしてるんだから……」 「……」 「……? ねっ……て……」 「行かなくて……いい」 「何で……? はっきりしてるじゃない……」 「……」 「ねぇ……どうして行かなくていいんね……」 「光男…………、お前が、そんな風に疑われたとして……、 ハイそうですかって認めるか? そんな事はない、そっちの間違いだろう……って、 突っぱねるやろう。第三者が誰も見ていないから、 確実な証拠は無い……」 「……でも、はっきりしてるじゃない。悔しくないの……。 お父さん今日一日働いて、三千円の損だよ……。 そんなのないよ……」 「因縁を吹っ掛けられたと……、 あっちこっちに言いふらされるのが……オチだろう……」 「じゃー……どうするのよ……お父さん……」 「このままでいい、……うん。このまま放っておこう……」 「……だって……」 「千円出して、四千円貰って、三千円得した様に見えるが……」 「…………」 「とても、三千円では買えないものを失った……所崎さん……」 「えっ?…………?」 「信用……だ……。 人間の信用という……とてつもなく貴重なものを、 あの人は失った……。 お父さんは、一生忘れない……。人に言う事は無いが……、 あの人を……二度と信用はしない……。 忘れかけても……折に触れて、思い出すやろう…………」 「信用……か。……もう、治療には来られないかなぁ……」 「いや、きっと来られる……あの人の腰の症状は、難しい……。 俺じゃないと治まらない。もう、20年の付き合いだ……」 「……凄い自信やね……お父さん。 ……でも、そんな付き合いで……騙すかねぇ。 ……やっぱり、ミスかなぁ……」 「うん……ミスなら、向こうから連絡が来るやろう……。 その内に……な」 <続く> ====================================================== ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 12年間蓄積した本ブログの一部を抜粋して本にしました。 『愛ことば・心の散歩路(ビジネス編上巻・中巻・下巻)』です。 それぞれ200円です。(^-^) AMAZON公式サイトで「愛ことば」で検索して下さい。 良かったら、どうぞ。よろしく、お願いします。 『愛ことば・心の散歩路(ビジネス編上巻・中・下巻)』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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