カテゴリ:和の心
◆
人気ランキングに参加しています。良かったらお願いします。 にほんブログ村 ^-^◆ 自分が造った物に「銘」を入れる誇り <Renewal> プーンと匂ってくる墨の匂いで……、少年の僕でもその日が わかります。普段は滅多に無い匂いですから……。 そして……、そんな日はきっと沢山あった筈なんですが……、 小学三年生の時の夏休みの思い出が今でも鮮明です……。 朝の10時頃……匂いは座敷からしてきました。 フスマを少し空けてそっと覗くと、じいちゃんが、 しずかに墨を磨っています。(ー_ー) ピンと張った麻の「甚平」を着ています。 じいちゃんは、この日にしかこの「甚平」を着ません……。 正座して……目をつむって……。 右ひざの横に置いた、硯の上を手がゆっくり行き来しています。 前には、飯台が置いてありました。 指物職人のじいちゃんが何日もかけて作っていた飯台で……、 郵便局長の奥様から頼まれたというものです……。 あんまり大きなものじゃなくて、一人か二人で、 ご飯を食べる時の、ちゃぶ台です。 昨日まで、ニスの匂いをプンプンさせながら、 細工場の端っこで、乾かしてあったものです。 じっと見ていると、じいちゃんが飯台を裏に向けて、 左の膝の上に、端を乗せて……それから、筆をとりました。 たっぷりと墨を含んだ筆です。 左手で飯台の脚をしっかり持って、 じっと裏面を睨むようにしていた、じいちゃんが、 さらさらさらと書き始めました。 きっと、いつもと同じように、今日の日付と「銘」を、 入れているのです。 「銘」は「正作」で、じいちゃんの名前。 どんな小さな小物でも、じいちゃんは、自分で作った物には、 必ずこの儀式をします。……カメの蓋でも……。 いつもの優しい表情とは違う、キリッとした顔で……。 じいちゃんは、この、キリッとした顔を時々します。 作品が出来上がってニスを塗る直前に、 何度も何度もあっちこっちから、作品を眺めながら…… ……その時、こんな目をします……。 ……真剣な目。 江戸時代の名工左甚五郎みたいで……かっこ良いです。 銘を入れたら、傍らにおいて墨が乾くのを待ちますが、 その時、必ずキセルに火をつけて、おいしそうに、 煙をゆったりと吐き出します。 この日も……そうです。 じいちゃんが、凄く偉く見える瞬間です。 この時は、ぜったい部屋に入って行けません。 厳しく止められているからだけでなくて、 いつもと違うじいちゃんがそこにいるからです。 じいちゃんは、亡くなるまで、職人の鑑って、 近所のおじさん達に言われていました。 じいちゃんみたいになりたいなって……当時思っていました。 この時のじいちゃんが、現在の私の年齢です。 自分が丹精込めて造ったものに誇りを持てる人間に、 少しは近づけているのでしょうか…………(^_^;) 人気ランキングに参加しています。良かったらお願いします。 にほんブログ村 ========================================================== ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 14年間蓄積した本ブログの一部を抜粋して本にしました。 『愛ことば・心の散歩路(ビジネス編上巻・中巻・下巻)』です。 それぞれ200円です。(^-^) AMAZON公式サイトで「愛ことば」で検索して下さい。 良かったら、どうぞ。よろしく、お願いします。 『愛ことば・心の散歩路(ビジネス編上巻・中・下巻)』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[和の心] カテゴリの最新記事
|
|