カテゴリ:しみじみと…………
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人気ランキングに参加しています。 良かったら【ポジティブな暮らし】をクリックお願いします。 にほんブログ村 ^-^◆ 二 つ の キ ャ ラ メ ル <Revival> 「ただいま」 玄関には、弟の靴。 返事が無い。 そっと部屋の戸を開けると、弟が仏壇の前で眠っている。 両手両足で、母親の枕をしっかりと抱きしめて。 母が亡くなって、半月……。 弟は、まだ小学二年生なのに、一度も淋しいと言わなかった。 だが、家にいる間は片時も母の枕を離そうとしない。 眠っているのに、目にはいっぱい涙を溜めている。 弟が寝返りを打つ度に母の枕も寝返りを打つ。 それはまるで、母が添い寝をしているかのようだった。 仏壇の中の母はどんな気持ちで弟の姿を見つめているのだろう。 「あっ、キミちゃん、お帰り」 不意に目覚めた弟は、そう言いながら涙をぬぐっている。 私は気付かないふりをして、ポケットからキャラメルを出した。 「慎ちゃん、これあげる」 私の手の中には、二個のキャラメル。 友達のお母さんからもらったものだ。 弟はそのキャラメルを、じっと見つめて言った。 「一つ、足りんね」 私と弟と、もう一つはきっと仏壇の中の母の分だ。 葬儀の日、弟が火葬場でぽつりと言った。 お母さんいなくなったねと。 目には見えなくても、いつもそばにいてくれるよと言った 私の言葉に、見えないのならいないのと同じだと泣き出した。 そばにいても僕にはわからないと、泣きじゃくる弟に、 小学六年の私は何も言えなかった。 その弟が、たった半月で、目には見えない母を感じている。 私は泣きそうになるのをグッとこらえ、 「姉ちゃんはいいから。これは慎ちゃんとお母さんのや」と、 キャラメルを弟に握らせた。 「お母さんが一番やね」 仏壇に置かれた、二個のキャラメル。 弟と二人、鈴の音が消えるまで、手を合わせた。 「お母さん、もう食べたかな。僕もう食べてもええかなぁ」 頷く私に弟はニコニコしながら、キャラメルの包みを開ける。 そのキャラメルの端を少しだけかじって、私に差し出した。 「僕は小さいけん。これでいいわ。あとキミちゃん食べて」 そう言った弟が、あっという間に涙で滲んで見えなくなった。 「おいしいなぁ」と食べる私は泣き笑い。 「キミちゃん、おかしいなぁ」と言った弟も泣き笑い。 仏壇の中の母も、きっと泣きながら笑っていたに違いない。 枕から母の香りがしなくなっても、 泣かないくらい強くなれるだろう。 仏壇の中の母は、今でもあのキャラメルの味を、 覚えているだろうか。 二十数年前のことを、今でも時折り思い出す。 <小村 公恵> ---お仏壇のはせがわ 「響き合う詩(うた)」より 人気ランキングに参加しています。 良かったら【ポジティブな暮らし】をクリックお願いします。 にほんブログ村 ========================================================= ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今まで蓄積した本ブログの一部を抜粋して本にしました。 『愛ことば・心の散歩路(ビジネス編上巻・中巻・下巻)』です。 それぞれ200円です。(^-^) AMAZON公式サイトで「愛ことば」で検索して下さい。 良かったら、どうぞ。よろしく、お願いします。 『愛ことば・心の散歩路(ビジネス編上巻・中・下巻)』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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