藍野家の日常

ステラのきょうだい達が、クリスのお乳をたくさん飲んで、ぐっすり眠っている。
この子たち4頭に、ステラの分まで元気に幸せに生きて欲しいと願って止まない。

仔猫たちと母猫クリス、そしてバーニィとアルのことで、母はここしばらく考え込んでいる。
クリスの出産のしばらく前あたりから、フードを変えようかと思案しているのだ。

今、弟妹たち(猫)が食べているフードは、母が選んだ。
十数年前のことになるが、母が学生の頃、先生が勧めていた会社のものだ。
一昨年の秋、バーニィとアルが藍野家の家族となったときから、ずっと、この会社の
フードを食べ続けてきた。

しかし、先日、母がネット上で調べものをしているとき、この会社について、
「日本企業に買収されてからは…。10年前は良いフードを作っていたのに」
という評価が多いことに気がついた。
気になった母は、ネットをあちこち見て回った。
そうするうち、添加物についての記載がどうしても気になってしまうようになった。
日本での人間の食品への使用は禁止されているが、家畜用飼料への使用は許されている
酸化防止剤があるという記事を読んだ。
BHAという添加物には発がん性が認められ、エトキシキンという添加物は除草剤など
としても使われ、ベトナム戦争の枯葉作戦にも使用されたということだ。
そして、母が選んだフードの会社の製品が、かつて、これらの添加物をフードに
使用していたという。(現在は使用をやめたとのこと)
いかに家畜用には認可された添加物とはいえ、枯葉剤に使われた薬剤をフードに
使用する会社を信頼していっていいのかと、疑問を抱きはじめた。

そんな母を更に考えさせるきっかけになったのが、ステラだった。
ステラは致命的な奇形をもって生まれ、流れ星のように短いいのちを終えた。
この、産まれおちた後に生きていけないほどの重度の奇形、というのが、母に
ベトナム戦争の枯葉剤を連想させた。

ステラの死は生まれもっての奇形のためだから、飼主としての落ち度を感じる必要はない、
と、かかりつけの先生は母に言ってくれた。
でも、それでは、なぜステラは奇形をもって生まれてきたのだろう？
もちろん、これはいくら考えてもわからないことだ。
父猫か母猫に遺伝上の問題があったのかもしれないし、突然変異なのかもしれない。
だが、人間の作り出した合成薬剤のせいではない、とも言い切れない。

2ヶ月前までノラ猫だったクリスが、それまで何を食べてきたのかは、わからない。
そして、藍野家に来てからは、現在は自社製品には毒性の強い添加物を使用していない
というメーカーのフードを食べさせている。
しかし…
母がエトキシキンやBHAへの不安を感じはじめたまさにその時、こんな姿で死んでいった
ステラを見てしまうと、何か因果めいたものを感じてしまってならない。
例えばエトキシキンは、胎児毒性、発ガン性、流産等の弊害が報告されているという。
ステラを殺したのは、ひょっとしたら、人間の作り出した合成の薬物ではないのか？
そうだとしたら、広い意味で、やはりステラを死なせたのは自分たちなのではないか…？

母は、フードを変えようと思った。
Blog上で勧められていたアズミラ　キャットフォーミュラを試してみたいと思う。
いわゆる「フード・ジプシー」にはなりたくない、と思って、いろいろなサイトを
読み比べて調べて、母がいちばん納得できたフードだった。
数日前から「変えるとしたら、アズミラにしたい」とは思っていたが、その気持ちを
ステラの件が後押しした。

これで何が変わるのかは、わからない。
ステラの死のショックで動転している部分も、あるのかもしれない。
だが、ステラのきょうだい達を大切に育てるクリスの姿を見ていると、母は、自分も
クリスのように「我が子」のためにできる限りのことをしたい、という思いを
止められなくなるのである。