ゼロ歳児に選挙権という知事の発言について
大阪の府知事がゼロ歳児も含めて子供にも選挙権を与えるべきだという主張をしているらしい。もちろん子供が自ら投票できるわけではないので、これは、事実上、子供の数に応じて選挙権に重みを付けるということになる。つまり独身者は一票であるのに対して、四人の子供がいれば夫婦で六票の選挙権を有し、その重さは独身者の三倍になるわけである。これは、まさに選挙権の平等原則に反するわけで、高額納税者の票と低所得者の票とに重みに差をつけるのと変わらない。もちろん弁護士でもある府知事が本気でこんな主張をしているとも思えず一種の釣り発言であろう。ただ、これをシルバー民主主義に対する感想と見れば別の見方もできてくる。子育て世帯の割合で検索をしてみると、2023年の資料で、全世帯に占める割合は18.3%で初めて20%を切ったという。今や核家族世帯だの母子世帯だのと言っても、成人した子供が老親と住んでいる世帯の方が多いわけだ。そこから考えれば、有権者の中でも、子育て中という人は少数派であろう。有権者のかなりの部分は独身者や子供がいるが、成人していて孫もいないという人々なのではないか。近年、子供の騒音に対する苦情がやたら増えているが、背景は同じであろう。かわいい子供や孫のいる人は、子供の声を騒音とは思わないものだから。マスコミにでるような立派な言論では少子化を憂え、子育て支援の充実をさけぶものがほとんである。国政選挙でもほとんどの政党は少子化対策をテーマの一つに掲げることだろう。しかし、地方知事ではどうであろうか。住民サービスと直結する地方自治では有権者のある種の本音がむきだしになる。高齢者の無料パスや施設利用券など高齢者優遇を前面に出す候補Aと子供の医療費や教育費無償化、子供向けの施設の充実など子育て支援を前面に出す候補Bがいたら、さて、選挙に勝つのはどちらだろう。子育て世帯の中には、子育て支援の充実している自治体を選んで引っ越すという話がある。一種の足による投票である。そうなれば近所の公園にも子供の騒音が響き、ボールは飛んでくるし、ラジオ体操やゲートボールの場所はとられる…子育て支援などとんでもない。そしてまた、子育て支援のしわ寄せで高齢者無料パスがなくなるのは許せない。こんな有権者がいたって不思議ではない。知事が、子供にも選挙権などということをいう背景には、自治体首長として、こうしたことに対する憂慮があるのかもしれない…以上妄想でした。