あじ島冒険楽校にご参加いただきました皆様へ
あじ島冒険楽校にご参加いただきました皆様へ 遠路はるばる牡鹿半島先端の網地島まで来ていただきまして,本当にありがとうございました。慣れない船旅もお疲れのことだったと思います。今年も,皆様にお会いできて,うれしく,本当に良かったと感じております。 「あじ島冒険楽校」は,今年で6年目となり,これまで,約500名の明るく元気な「未来の大人たち」等を迎えて開催してまいりました。事故もなく無事に開催してこられたのも皆様のご協力の賜物と感謝いたしております。 今年は,「うに」,「あわび」,「ほや」の3コースを開催し,約100名の「未来の大人たち」等を迎えて,開催いたしました。普段このような交流事業は行っていない島の者が,中心となって開催しているため,いたらない点が多々あり,ご迷惑をおかけすることばかりであったと思います。しかし,皆様のご協力を賜り,たくさんの楽しい思い出を胸に,お家へ帰っていただくことができたのではないかと思います。 この6年の間に,何度も御参加していただいている「未来の大人たち」を見る度に,健やかにご成長されている様子を間近に感じることができます。大きくなられると,自然に小さな子どもたちの面倒をみてくれるようになります。その様子は本当に微笑えましいものです。また、参加できる最後の中学2年生になって、4年ぶりに参加してくれた女の子もいました。ホームシックになり、職員室で泣いていた姿が昨日のことのように思い出されます。姉妹で来ていた子どもたちは,お姉ちゃんが中学の部活で忙しくなり、妹さんだけが1人で参加してくれました。みんな,数年後,大学生になったら、あじ島冒険楽校のスタッフとして網地島に戻ってきてください。 さらに,あじ島冒険楽校を楽しく盛り上げてくれたボランティアスタッフの大学生リーダーの中には結婚して,出産された方や何年も講師を続けられ,首都圏で念願の教師になられた方もおります。皆,新しい世界に旅立ち,少しずつ,網地島から離れられていくのかもしれません。 将来,あじ島冒険楽校に参加してくれた「未来の大人たち」が大学生リーダーとなり,ママやパパになったかつての大学生リーダーとその子どもたちを迎えることができれば、これほどうれしいことはないと考えております。高齢者しかいない網地島では見られなくなってしまった地域を継続させる世代交代をこのあじ島冒険楽校を通じて見ることができれば幸いです。 網地島は,10年間で人口が半減してしまうような急激な人口流出と7割近い高齢化率に苦しんでおります。島は,70代80代の高齢者ばかりとなって,地域のために動ける人が少なくなり,コミュニティーの維持も難しくなってきています。いわゆる「限界集落」となってしまいました。 かつては,500人を超える小中学生がいた時期もありましたが,小中学校は平成12年3月に休廃校され,元気な子どもたちの声を聞くことはほとんどありません。 また,マツクイムシの被害も甚大で,一山すべての松が枯れてしまったところが,いたるところにあります。倒木は道を塞いで,人や車が通れなくなり,やがて,雑草や雑木が生い茂って,道がなくなってしまった所もたくさんあります。そして,山の荒廃は,島の漁業資源にも大きな影響を与えています。 「あじ島冒険楽校」は,島民自らが,このような網地島の厳しい現状を何とか打開しようと,県や石巻市のご指導を受けて,島の地域づくりとして始めたものです。厳しい現状ばかりで,どうにもならないという現実があります。しかし、網小医院や離島航路を守り、島を未来につなぎ,最後の時まで島の高齢者が安心して暮らせるように頑張っていきたいと考えております。 「未来の大人たち」が,本当の大人になったとき,この島は誰も住んでおらず,人々の記憶の中から消えているかも知れません。しかし,タブノキやシュロ,アオスジアゲハやオニヤンマ,魚釣りやシーカヤック,青い海と白い砂浜,新鮮なうにやあわび、鯨肉やトイ汁、マルコ汁やメカブ、手作りの味噌や梅干し、あたたかい味噌おにぎり、竹とんぼや竹鉄砲作り、あじ島冒険楽校のおじいちゃんやおばあちゃんたちのことをどうぞ忘れないでいてください。 皆さんの思い出の中に,網地島は,いつまでもあり続けたいと思います。あじ島冒険楽校 楽校長 小 野 勝 吉