この二人の女性たちのように「おしゃれのためだったら少しぐらい髪が傷んでも仕方がないわ」という気持ちもよくわかります。
しかし美容室での毛染めも含めて、染毛剤やブリーチなどの脱色剤には、髪を傷めるだけではなく、人によっては頭皮が赤くなったり、かぶれたりする強い化学成分が含まれています。
考えてもみてください。日本人の黒い髪を茶色や金色に染めるとしたら、黒い色を抜かなければ明るい色には染まりません。また脱色するには強い薬液を使わなければ黒い色を簡単に抜くことはできないのです。
厚生労働省は、これら染毛剤に使われている金属性色素には毒性があると認めたうえで、永久染毛剤を「医薬部外品」と定めています。 そのため、市販の染毛剤には必ず一定時間パッチテストをして、皮膚に異常がでないかどうか確かめてから使うといった規定があります。
毛髪や毛穴から浸透する金属性色素について安全面ではどうなのか、さらに若いうちから脱色、毛染めを繰り返すことによって十年、二十年後、どんな結果があらわれてくるか、考えている人はどれだけいるでしょうか。
薬剤の影響が医学的に立証されるまでには長い時間がかかります。 それに対して茶髪が一般の人に受け入れられてから、まだ数年しか経っていません。
しかし傷んだ髪を何とかしたいと、美容室に駆け込んでくる新しいお客様の髪の状態を見ていると、もう徐々にその影響があらわれている、というのが私の美容師としての実感なのです。 |