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図書館で予約したら百人待ちくらいだったので、順番が回ってくる頃には何でこ
の小説を読もうと思ったのかは、忘れてしまった。誰かが褒めていたか らかも しれない。 どうにもぼんやりした印象。大きすぎるテーマを消化しきれていない気がする。 過去と現在との対比、母と娘と対比、現実と幻想の対比…。たとえ赤坂 真理とマ リ・アカサカが同一人物だったとしても、ポンとアメリカの片田舎に放り出され た十五歳の主人公に東京裁判を追体験させる、というのは無理があった のでは な いか。主人公の設定年齢と語り手の認識力とに差がありすぎるのがどうも気 になって仕方がなかった。これは一人称小説の最大の問題だ。 それに、2011年3月11日も、取ってつけた感じ。連載中にそれが起きたから入れ てみました、みたいな。 作者の天皇と日本人観など、ハッとさせられる非常に興味深い記述がところどこ ろにある。例えば「天皇に対する歴史上の日本人の態度には、どこか不 思議な も のがある。たてまつりながら利用する。最高権威をあたえながら実権は与え ていない。しかし、最後の最後に彼に向ってひれ伏す。などなど。(中略) だと した ら天皇は、本質的にパペットということにならないか。」(p.266) また、三島由紀夫の『英霊の聲』を論じたあたりとか。「この混乱(注:天皇を 髪じゃないと知って騙され、結果的に裏切られ、恨むこと)は、日本人 に今でも 広く持たれ、私自身をもいまだに困らせる混乱であると感じたのだ。誰もあえて 言葉にしようとしなくなっただけ、より厄介だった。(中略)しかし、 答えのな さに誰かが正面から立ち向かわなければ、次は因果がまったくわからない者たち に空虚さが継がれていく。」(p.387) 時の権力者が、なぜ天皇家を滅ぼして自分自身が最高権威者とならず、天皇家の 権威を利用してきたのか、というのは今でも僕の中でもまた、大いなる 疑問で ある。あの、織田信長でさえ、朝廷を滅ぼそうとはしなかった。 すとん、と腑に落ちる答えは、まだ見つからない。 そんなわけで、これから何冊か、日本人と国家を描いた小説をいくつか読む予定。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.01.22 21:49:34
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